- 新規事業の検証とは何か|決まるのは手法ではなく「やめる基準」
- 新規事業の検証は5段階に分かれる|段階ごとに確かめること
- 検証手法の選び方|インタビュー・MVP・需要テストの使い分け
- 顧客の発言と行動はなぜズレるのか|実案件のデータで見る
- 判定基準の決め方|前進・ピボット・撤退を数値で分ける
新規事業の検証を進めようとすると、手法の選び方に目が向きがちです。ただ、結果を分けるのは手法ではなく、何の数字が出たら止めるかを検証前に決めてあるかどうかです。本記事では、実際に広告を運用して判定した案件のデータをもとに、判定基準の作り方と社内説明に使える形を示します。
| 読者の問い | 結論 |
|---|---|
| 何から手をつけるか | 手法選びより先に、採算から逆算できる項目に判定基準を置く |
| どの数字で判断するか | 成約から見て、判断がつかなければ問い合わせ、クリック率の順に下りる |
| いくらかかるか | 本案件では広告費約10万円で、どの顧客層に絞るかまで判断できた |
新規事業の検証とは何か|決まるのは手法ではなく「やめる基準」

新規事業の検証を任されると、多くの場合はまず手法の情報から集めることになります。ただ、顧客インタビューやMVPといった手法を選び終えても、判断そのものが前に進まないという状態は現場でよく起こります。
検証の定義と、仮説検証との違い
「検証」という言葉は、使われる文脈によって指す範囲が変わります。仮説検証という言い方をするときは、顧客インタビューやMVPを通じて課題と解決策を確かめる活動を指すことが多くなっています。一方で、新規事業の現場で単に「検証」と呼ばれるものには、需要検証や事業性検証も含まれます。前者は市場に需要が存在するかを確かめ、後者は採算が取れる形で成立するかを確かめる段階です。
そのため、言葉を揃えないまま議論を進めると、話し手は課題検証を、聞き手は事業性検証を想定したまま噛み合わないということが起こります。いま何を確かめようとしているのかを、段階の名前で呼び分けるところから始めるとよいでしょう。
基準を先に決めないと、判断が主観に寄る理由
手法を決めたのに判断が進まない理由は、結果を評価する基準が検証の後に作られているためだと考えています。
たとえば、顧客インタビューで「便利そうですね」という反応が10件集まったとします。この結果は、基準がない状態では前進の材料にも撤退の材料にもなります。推進したい担当者は関心の高さとして読み、慎重な立場の人は購買意思が確認できていないと読みます。どちらの読み方も否定できないため、議論は検証結果そのものではなく、社内の力関係によって決着することになります。
検証を始める前に「この数値を下回ったら止める」と決めておくと、結果の解釈の余地が小さくなります。仮説が外れた場合も、判断を誤ったのではなく、事前に合意した基準に照らした正当な意思決定として扱えるようになります。
では、その基準はどの指標に、どのように置けばよいのでしょうか。すべての指標に基準を置けるわけではないため、本記事の後半で実案件のデータとあわせて扱います。まずは、検証がどの段階に分かれていて、それぞれで何を確かめるのかを整理しておきましょう。
新規事業の検証は5段階に分かれる|段階ごとに確かめること

検証は一度にすべてを確かめる作業ではなく、段階ごとに確かめる対象が入れ替わっていきます。前の段階で得た確からしさの上に次の投資を積む構造になっているため、段階を飛ばすと、前提が未確認のまま資源を投じることになります。
| 段階 | この段階で確かめること | 主な手段 |
|---|---|---|
| テーマ設定 | 自社が取り組む価値のある領域か | 自社の強みの棚卸し、市場動向の調査 |
| 課題検証 | 解く価値のある課題が実在するか | 顧客インタビュー、現場観察 |
| 解決策検証 | その解決策に顧客が価値を認めるか | 提案資料、紙のモックアップ |
| 需要検証 | 市場が実際に反応するか | 検証用LPと広告、先行予約 |
| 事業性検証 | 採算が取れる形で広がるか | 有償提供、単位あたり採算の試算 |
テーマ設定|検討に値する領域か
既存事業を持つ企業の場合は、顧客の課題を見に行く前にテーマを絞り込む工程が入ります。自社の強み、顧客基盤、技術、地域のネットワーク、市場の動きを並べたうえで、どの領域なら課題を確かめる価値があるのかを見極めます。この段階の成果物は完成した事業計画ではなく、次の段階で確かめるためのテーマ仮説になります。
課題検証|解く価値のある課題が実在するか
最初に確かめるのは、解く価値のある課題が本当に存在するかという点です。ここでの主役は自社の製品ではなく、顧客が現在困っていることになります。課題が実在していて、発生の頻度が高く、対価を払ってでも解決したい水準にあるかどうかを見極めます。確認の起点になるのは、その課題に今どう対処しているのかという行動の事実です。すでに別の手段に時間やお金を使っているのであれば、課題の深さを行動で裏づけたことになります。
解決策検証|その解決策に顧客が価値を認めるか
課題が確認できたら、自社の解決策がその課題を実際に解けるのか、顧客が価値を認めるのかを確かめます。この段階で完成品は必要ありません。紙のモックアップや提案資料、人手で価値提供を模した実験でも判断はできます。ここで見たいのは前向きな反応そのものではなく、支払いの意思や先行予約のように、一歩踏み込んだ行動が出てくるかどうかになります。
需要検証|市場が実際に反応するか
需要検証では、個別の顧客ではなく市場全体を相手にして、想定した価値が届くのかを確かめます。インタビューで良い反応が得られたとしても、同じ反応が市場全体で再現されるとは限りません。面識のない相手が、こちらから説明しない状態で自分から反応するかどうかを見る段階だと考えています。社内で合意した訴求が市場の使う言葉と一致しているかどうかは、この段階で初めて表に出てきます。
事業性検証|採算が取れる形で広がるか
最後に、有償での提供を広げながら、獲得コストや継続率、1件あたりの採算が健全かを測ります。収益計画が意味を持つのはこの段階です。課題や価値が未検証のうちから事業性を問うと、担当者は根拠の乏しい売上見通しを作らざるを得なくなります。それが、有望な案を早い段階で止めてしまう原因にもなります。
自社の事業がどの段階にあるかが定まると、次に選ぶべき手法も絞り込めるようになります。
検証手法の選び方|インタビュー・MVP・需要テストの使い分け

検証の手法には、どの段階でも使える万能なものはありません。それぞれの手法には得意な段階があり、分かることと分からないことが必ず対になっています。
顧客インタビュー|課題の実在を確かめる
課題検証の段階で中心になる手法です。聞き方の原則は、未来の意向ではなく過去の行動を聞くことにあります。「このサービスがあれば使いますか」と尋ねると、相手は気を遣って前向きに答えやすくなります。そのため、最後にその課題が起きたのはいつか、どう対処したかを聞くほうが課題の深さを測れます。
インタビューで分かるのは、課題が生まれる文脈や、現在使っている代替手段です。一方で、話を聞く相手はこちらが選んでいるため、市場全体にどれだけの需要があるかは分かりません。
MVP・プロトタイプ|解決策の価値を確かめる
解決策検証の段階で使う手法です。MVPは製品の縮小版である必要はなく、提案資料での提案や、裏側を人手で回す形でも成立します。
着手する前に、そのMVPで何を確かめるのかを1つに決めておく必要があります。ここが曖昧なまま作ると、集まるのは機能の改善要望ばかりになります。MVPで分かるのは、顧客が実際に使うか、使い続けるかという行動です。ただし、使ってもらう相手を自分で集めることが多いため、面識のない市場全体の反応とは分けて考える必要があります。
検証用LPと広告|市場の反応を数値で確かめる
需要検証の段階で使う手法です。価値提案を1枚のLPにまとめ、広告を通じて面識のない見込み客を集め、問い合わせや資料請求の件数を測ります。
この手法では、需要の有無に加えて、どの訴求やどの顧客層に反応が集まるかを数値で比べられます。一方で、なぜ反応したのか、なぜ反応しなかったのかという理由までは分かりません。また、問い合わせの後に商談や受注に至ったかを追うには、営業側での追跡が別途必要になります。
手法の比較表
| 手法 | 向く段階 | 分かること | 分からないこと | 期間の目安 | 費用の主な内訳 |
|---|---|---|---|---|---|
| 顧客インタビュー | 課題検証 | 課題の文脈、代替手段 | 市場全体の需要量 | 数日〜数週間 | 対象者への謝礼、募集の手間 |
| MVP・プロトタイプ | 解決策検証 | 実際に使うか、継続するか | 市場全体の反応 | 数週間〜数か月 | 制作・開発の費用と工数 |
| 検証用LPと広告 | 需要検証 | 需要の有無、反応する訴求と層 | 反応の理由、受注率 | 数週間 | LP制作費、広告費 |
これらは置き換え合うものではなく、組み合わせて使うものです。インタビューで課題を確かめ、LPで市場の反応を測り、両者の結果がずれていれば課題の段階に戻るという往復が生まれます。需要検証の費用については、実案件の数値とあわせて後半で扱います。
顧客の発言と行動はなぜズレるのか|実案件のデータで見る

ここからは、実際に需要検証を行った案件のデータをもとに話を進めます。対象はリネンサプライ事業で、宿泊施設などにシーツやタオルを貸し出し、使用後に回収して洗濯する事業です。既存とは別の顧客層に需要があるかを確かめるため、約10万円の広告費で検索広告を配信し、30語のキーワードに対する反応を測りました。
自社が強みと考えた訴求は、表示回数ゼロだった
この案件では、自社が強みと考えていた汚れの品質管理と、小ロットでの対応をもとに訴求を用意しました。それぞれに対応するキーワードを設定して配信した結果は、次のとおりです。
| 訴求 | 表示回数 | クリック |
|---|---|---|
| 汚れでお困りなら | 0 | 0 |
| 小ロットのリネンサプライ | 0 | 0 |
| リネン管理 | 11 | 0 |
表示回数がゼロということは、配信期間中にこれらの言葉で検索した人がいなかったことを意味します。「リネン管理」も表示は11回にとどまり、反応を判断できるほどの検索量はありませんでした。
ただし、この結果は「汚れや小ロットに困っている事業者がいない」という証明にはなりません。分かったのは、その困りごとがこの言葉では検索されていないという事実までです。
実際に反応したのは「業者を今すぐ探している」語だった
反応が集まったのは、「民泊でリネンサプライをお探しなら」「リネンのレンタル業者をお探しなら」といった訴求でした。どちらも、業者を探しているという状況がそのまま言葉に表れています。
差がはっきり出たのはクリック率です。民泊向けの語のクリック率は17.0%で、「リネンサプライ」「業者」といった汎用語の5.7%を大きく上回りました。この規模の表示回数でも、偶然のばらつきでは説明できない開きがあります。
検索していた人たちは、自分の課題を「汚れ」や「管理」という言葉で整理していたわけではありませんでした。自分の業態の名前に「業者」や「レンタル」を組み合わせて、発注先そのものを探していたということになります。
この発見はインタビューでは見えにくい
インタビューで自社の強みを示して意見を求めると、相手はその価値を肯定しやすくなります。汚れの品質管理が大切かと聞かれて、否定する事業者はほとんどいないはずです。そのため、強みが価値として認められるかは確かめられても、発注先を探す場面で使われる言葉かどうかまでは分かりません。
検索広告では、相手が自分の言葉で検索したときにだけ広告が表示されます。こちらが言葉を提示するのではなく、相手が使った言葉を観測する形になるため、訴求と市場の言葉のズレがそのまま数字に出てきます。
この結果を受けて、強みの訴求を捨てる必要はないと判断しました。汚れの品質管理や小ロット対応は、検索で見込み客と出会う言葉としては機能しませんでした。一方で、LPを訪れた相手に比較材料として示す言葉としては使えます。広告の見出しには相手が使う言葉を置き、自社の強みはLPの中で示すという役割分担が必要になります。
判定基準の決め方|前進・ピボット・撤退を数値で分ける

前のセクションで扱ったのは、どの言葉に反応があったかという観測の結果でした。ここでは、その観測結果を事業の判断に変えるための基準の置き方と、判定の手順を扱います。
検証開始前に埋める判定基準シート
判定基準は、検証を始める前に項目と数値を決めておきます。ただし、すべての指標に基準値を置くわけではありません。表示回数や問い合わせ率は、新規事業では過去の実績がなく、事前に予測する根拠がないためです。根拠のない数値を基準にすると、基準そのものが恣意的になってしまいます。
そこで本案件では、採算から逆算できる獲得単価と、事業の仮説そのものである顧客層の反応にだけ基準を置きました。表示回数は、判定に必要な件数が集まったかを確かめるために使い、問い合わせ率は記録にとどめています。基準値の欄は空けてあるので、自社の数値を記入して使ってください。
| 区分 | 判定項目 | 事前に置く基準 | 本案件の実績 | 本案件の判定 |
|---|---|---|---|---|
| 基準を置く | 獲得単価は許容上限以内か | CPA( )円以内 | 約6,500円 | 達成 |
| 基準を置く | 想定した顧客層に反応があったか | 想定した全セグメントで反応 | 民泊は反応あり、清掃系は反応なし | 部分達成 |
| 前提の確認 | 判定に必要な件数が集まったか | 置かない | 表示約1,850回 | 判定可能 |
| 記録のみ | 問い合わせ率 | 置かない | 11.63% | ― |
| 総合判定 | ― | GOの条件( ) | ― | GO(民泊に限定) |
※本案件の獲得単価の基準値は、クライアントの採算に関わるため記載していません。
本案件の結論はGOでしたが、適用範囲は反応が確認できた民泊セグメントに限定しました。全体の平均値だけで判断すると、反応のなかった層にまで予算を広げることになるためです。なお、実績の数値は1案件のものであり、合格ラインの目安として使えるものではありません。
基準値は配信前に合意し、記録に残す
基準値は、検証を依頼する側と実行する側が、配信を始める前の打ち合わせで合意しておきます。獲得単価の基準値は、他社の平均値や業界の相場を借りてくるものではありません。逆算の方法は次のセクションで扱います。
合意した基準値は書面に残しておくのがおすすめです。結果が出た後に数値を動かしたくなったとき、記録があれば歯止めとして機能します。
BtoBは母数が集まらない|成約から順に指標を下りる
BtoBの判定では、最終的な成果である成約から見るのが原則です。ただ、BtoBの新規事業は対象となる企業の数が限られるため、短期間の検証では成約の件数が十分に集まりません。そこで、上位の指標から順に確認し、判断がつかない場合にだけ一段下の指標に下りるという手順を取ります。
本案件で判断したかったのは、どの顧客層に絞るかという点でした。この手順をたどった結果が次の表です。
| 確認する順番 | 指標 | 本案件の実績 | 判断がついたか |
|---|---|---|---|
| 1 | 成約 | 問い合わせ15件のうち2件 | つかない |
| 2 | セグメント別の問い合わせ率 | 民泊20.0%、汎用語9.3% | つかない |
| 3 | セグメント別のクリック率 | 民泊17.0%、汎用語5.7% | ついた |
問い合わせ15件のうち成約2件という結果は、実際の成約率が4%程度でも38%程度でも起こりうる件数です。幅が広すぎるため、判断の材料にはなりません。問い合わせ率も、民泊と汎用語で差があるように見えますが、件数が少ないため取りうる範囲が重なっており、差があるとは言い切れません。一方でクリック率は、民泊が約12〜24%、汎用語が約5〜7%の範囲に収まり、範囲が重なりませんでした。
下位の指標で判断がついたからといって、上位の指標を確かめなくてよいわけではありません。クリック率が示すのは関心の強さであり、受注につながるかどうかまでは示しません。そのため本案件では、民泊に絞ったLPで再度検証し、成約まで追う設計を次の一手としています。
「判断不能」を正式な結論として用意する
判定の選択肢をGOとNO-GOの2つだけにすると、件数が足りずに判断できない結果も、どちらかに振り分けられてしまいます。判断不能を3つ目の結論として最初から用意しておくと、標本が足りない結果を、続ける理由にも止める理由にも使わずに済みます。
本案件の清掃系の語は、クリック5件で問い合わせが0件でした。全体の問い合わせ率から計算すると、5件のクリックで問い合わせが1件も出ない確率は半分を超えます。そのため、清掃系を対象外としたのは問い合わせがゼロだったからではなく、クリック率が民泊と比べて明確に低かったためです。
ゼロがどこに出たかで切り分ける
指標のどこでゼロが出たかを見ると、次に何を直すべきかが分かります。この切り分けは数値の絶対値を使わないため、業種や予算規模を問わず使えます。
| 観測された状態 | 意味すること | 次の行動 |
|---|---|---|
| 表示がゼロ | その言葉で検索されていない。需要がない証明ではない | キーワードを言い換えて再測定する |
| 表示はあるがクリックがゼロ | 言葉は存在するが、広告文が相手に響いていない | 広告の訴求を見直す |
| クリックはあるが問い合わせがゼロ | 関心はあるが、LPで離脱している | LPの構成や申込みの条件を見直す |
| 問い合わせはあるが商談がゼロ | 問い合わせの質が想定と合っていない | 対象の絞り込みとフォームの設計を見直す |
| どの指標も件数が少ない | 標本が足りず、結論は出せない | 期間の延長か予算の追加で件数を集める |
本案件の「汚れ」「小ロット」の訴求は1行目に、清掃系の語の問い合わせの結果は5行目に当たります。
新規事業の検証にいくらかかるか|需要検証の費用の内訳と実額

ここでは、市場の反応を数値で確かめる需要検証に絞って、費用の内訳と実案件での金額を示します。インタビューやMVPは、対象者の数や作る範囲によって費用が大きく変わるため、一律の金額では比べられません。
費用は広告費・LP制作・判定の3つに分かれる
需要検証の費用は、広告費、検証用LPの制作費、結果を分析して判定する工数の3つで構成されます。このうち、検索市場の状況によって金額が決まるのは広告費です。
広告費は、判断に必要なクリック数にクリック単価を掛けて見積もります。本案件のクリック単価は平均で約760円、問い合わせ1件あたりの獲得単価はセグメントによって約3,600円から約7,800円の幅がありました。クリック単価は業種や競合の数で大きく変わるため、この金額をそのまま自社に当てはめることはできません。
必要なクリック数は、確かめたい差の大きさで決まります。本案件のようにクリック率に3倍近い差があれば、1セグメントあたり100〜150回程度の表示で差が見えました。差が小さい場合は、その何倍もの件数が必要になります。
広告費の約3割は問い合わせにつながらない
本案件では、広告費約10万円のうち約2.8万円、全体の28%が問い合わせにつながらない消化になりました。内訳は、「リネンサプライ」単体の語が約1.3万円、清掃系の語が約4千円、その他の語が約1万円です。
「リネンサプライ」単体の語は、業者を探している人だけでなく、業界について調べている人も検索します。どちらの意図の検索が多いかは配信してみるまで分からないため、この消化は反応のない層を特定するための費用だと考えています。
消化分を民泊に回せば問い合わせが増えるという見方もできます。ただ、民泊向けの語は検索量そのものが少なく、予算を増やしても同じ効率で消化できるとは限りません。外れる語への消化は削る対象ではなく、最初から予算に組み込んでおく前提として扱うのがおすすめです。
許容できる獲得単価を自社で逆算する
判定基準の獲得単価は、自社の採算から逆算して決めます。次の表の順に数値を埋めると、許容できる獲得単価が出てきます。
| 項目 | 自社の数値 | 計算 |
|---|---|---|
| 受注1件あたりの粗利 | A円 | ― |
| 粗利のうち獲得にかけてよい割合 | B% | ― |
| 許容できる受注単価 | ― | A×B |
| 問い合わせから受注に至る割合 | C% | ― |
| 許容できる獲得単価 | ― | A×B×C |
新規事業では、問い合わせから受注に至る割合がまだ分からないことがほとんどです。その場合は既存事業の数値を使うか、低めに仮置きしておき、検証の結果を見て更新していきます。本案件は広告費約10万円に対して成約2件でしたが、2件では受注率を割り出せないため、Cの値として使えるものではありません。
新規事業の検証を誰が担うか|内製・外注・検証しないの比較
検証を担う相手は、内製を含めて大きく6つに分かれます。どれが優れているかではなく、いまの段階で確かめたいことに合っているかで選ぶものです。
6つの選択肢の比較
| 担い手 | 得意な段階 | 費用の決まり方 | 向くケース | 向かないケース |
|---|---|---|---|---|
| 内製 | 全段階 | 担当者の工数と実費 | 広告運用やLP制作の経験者が社内にいる | 担当者が兼務で、判定の設計まで手が回らない |
| 広告代理店 | 需要確認後の拡大 | 広告費に応じた手数料が中心 | 需要が確認できた後に本格運用へ移る | 少額・短期で需要の有無だけを知りたい |
| 調査会社 | テーマ設定、課題検証 | 回答者数と設問数 | 市場規模や認知度を多数の回答で把握したい | 問い合わせなどの実際の行動を測りたい |
| 新規事業コンサル | テーマ設定〜解決策検証 | 関与の期間と深さ | 社内の体制づくりを含めて全体を伴走してほしい | 需要の有無だけを早く確かめたい |
| 開発会社 | 解決策検証〜事業性検証 | 開発の範囲と工数 | MVPを作り、そのまま本開発につなげたい | 作る前に需要があるかを確かめたい |
| 検証専業 | 需要検証 | 1回の検証ごとの料金と広告費の実費 | 続けるかどうかの判断材料を短期で得たい | 課題検証の段階や、需要確認後の本格運用 |
外注先を選ぶときは、判定の結果によってその外注先の売上がどう変わるかを確認しておくとよいでしょう。続行の判断が次の発注につながる構造は、どの担い手にも少なからずあります。判定基準を依頼前に自社で決めておけば、誰に頼んでも判断が相手の都合に寄りにくくなります。
内製が向くケース、外注が向くケース
内製が向くのは、広告アカウントの運用とLP制作の経験者が社内にいて、検証を何度も回す予定がある場合です。回数を重ねるほど、ノウハウが社内に残る価値が大きくなります。
一方で、事業の推進者が自分で判定まで行うと、結論が続行の側に寄りやすくなります。推進者とは別の担当者か、外部に判定を任せるほうが、結果を冷静に読めます。
「検証しない」が合理的なケース
検証そのものに費用と時間がかかる以上、検証しないほうが合理的な場面もあります。1つ目は、検証の費用が、失敗したときの損失を上回る場合です。小さく始めて売れなければやめられる事業なら、そのまま出して反応を見るほうが早く答えが出ます。2つ目は、既存の顧客に直接提案でき、受注そのもので需要を確かめられる場合です。3つ目は、規制への対応や取引先からの要請のように、需要ではなく外部の事情で実施が決まっている場合です。
広告による需要検証が機能しない領域
検索広告による需要検証は、相手が自分で検索することを前提にしています。そのため、課題にまだ名前がついておらず検索されていない新しい分野では、表示回数が伸びず判断材料が集まりません。対象となる企業が数十社しかない領域や、紹介や入札で発注先が決まる業界も同様です。こうした領域では、対象企業への直接の提案や、業界団体を通じた接触のほうが、少ない件数でも確かな反応を得られます。
社内で合意を取るための進め方|そのまま使えるチェックリスト
検証の結果を社内で通すには、配信を始める前の準備と、結果を出した後の見せ方の両方を整えておく必要があります。
検証を始める前のチェックリスト
次の7項目を事前に埋めておくと、結果が出た後に判定の正しさで揉める原因の多くを先に潰せます。
| チェック項目 | 決まっていないと起きること |
|---|---|
| 確かめる段階を1つに決めたか | 課題と需要を同時に測ろうとして、どちらの結論も出ない |
| 検証する仮説を1つに絞ったか | 結果が出ても、どの仮説が外れたのか分からない |
| 採算から逆算できる項目に基準値を置いたか | 結果を見てから基準を作ることになる |
| 基準値を関係者で合意し、記録したか | 結果が出た後に基準値が動かされる |
| 判断不能のときの扱いを決めたか | 件数不足の結果がGOかNO-GOに寄せられる |
| 予算と期間の上限を決めたか | 判断がつくまで追加投資が続く |
| 判定を誰が行うかを決めたか | 推進者の判定が続行の側に寄る |
判定後の3択の出し方
判定の結果は、GOかNO-GOの二択ではなく、推奨案を1つ示したうえで3つの選択肢として出します。二択にすると、出てきた数字の解釈ではなく、続けるか止めるかという結論の是非に議論が移ってしまうためです。本案件では、次の3択を提示しました。
| 選択肢 | 内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 民泊特化で再検証(推奨) | 民泊事業者向けにLPと訴求を変え、成約まで追う | 関心の強さが受注につながるかを確かめる |
| このまま本格展開 | 反応のなかった語を止め、予算を増やして運用する | 最も早いが、受注率が未確認のまま投資を増やす |
| 別の顧客層で検証 | 介護施設やサロンなど未検証の層で同じ手法を試す | 民泊以外の可能性を探る |
推奨案には、その案を選ぶ理由と、選ばなかった案で残るリスクを1行ずつ添えておきます。結果がNO-GOだった場合も同じ形で、撤退、方向転換、判断の保留の3つを並べると、止めるという判断を組織として選びやすくなります。
あなたがいま検証を控えているなら、まずは判定基準シートの基準値の欄を、自社の数字で埋めてみてください。獲得単価の欄に数値を置けないのであれば、自社の採算がまだ整理できていないということです。それこそが、検証を始める前に社内で議論しておくべき論点になります。
その新規事業、「売れるか」を2週間で確かめられます
カリアドは、新規事業の需要検証に特化したサービスです。
調査レポートや社内の議論では、結局「売れるかどうか」は分かりません。検証用LPを作り、実際に広告を配信し、見込み客が反応するかどうかを数値で確認します。
開発に数百万円を投じる前に、まず市場に聞く。それが最も安く、最も速い意思決定の方法だと考えています。
期間は2週間程度、費用は定額。検証レポートと広告の生データをお渡しするので、そのまま社内報告にお使いいただけます。
まずは無料相談から。検証すべき仮説の整理だけでもお役に立てます。

