- テストマーケティングとは?目的と、市場調査との違い
- テストマーケティングの手法7種 何が分かって、何が分からないか
- テストマーケティングの費用相場と期間
- 実施前に決めておく判定基準
- テストマーケティングの依頼先6種と選び方
新商品や新規事業を進めていると、どこかで「このまま進めていいのか」という判断が必要になります。テストマーケティングは、その判断材料を、投資が大きくなる前に集めるための手法です。ただし手法を選ぶところから始めると、終わったあとに何も決まらないという結果になりがちです。先に決めるべきなのは、どうなったら続け、どうなったら止めるのかという基準のほうです。
この記事では、あなたが今抱えている3つの問いに順番に答えていきます。
| 問い | この記事の答え |
|---|---|
| 何が分かるのか | 手法ごとに観測できる範囲は決まっている。分からない領域を先に確認する |
| いくらかかるのか | 数万円から数百万円まで。手法よりも「確かめたい仮説の数」で決まる |
| 誰に頼むのか | 依頼先6種にはそれぞれ構造的な制約がある。知りたいことが制約に入っていない先を選ぶ |
テストマーケティングとは?目的と、市場調査との違い

テストマーケティングは、新商品や新サービスを本格的に投入する前に、規模を限定して実際に売ってみることで市場の反応を確かめる手法です。全国展開の前に特定の地域だけで先行販売する、量産の前に少数を試験的に売るといった形が代表的です。投資の規模が大きくなる前に判断材料を集めるという点で、集客や販促を目的とした施策とは性格が異なります。
テストマーケティングの3つの目的
1つ目が、市場反応の予測です。限定的な販売の結果から本格投入時の需要を見積もり、在庫を持つ商材であれば生産量や仕入れ量を決める根拠にします。
2つ目が、ターゲット層の確認です。想定していた顧客層と、実際に反応した層とのずれを見ます。20代向けに設計した商品が30代に多く買われていた、というずれはよく起こります。ずれが分かれば、訴求の内容と届ける先を組み直すことができます。
3つ目が、商品やサービスの改善点の特定です。実際に買った人の反応をもとに、価格や仕様、見せ方を調整していきます。
どれを主目的に置くかによって、選ぶべき手法も、見るべき数字も変わります。 目的を絞らないまま始めると、結果が出たときにどの数字で判断すればいいのかが決まりません。
市場調査との違いは「聞く」か「買ってもらう」か
混同されやすいのが市場調査です。市場調査はアンケートやインタビューを通じて意見や意向を集めますが、テストマーケティングは実際に販売して、そこで起きた購買行動を観測します。
この差は、得られるデータの性質に効いてきます。調査の場で「買いたい」と答えることと、自分のお金を出して買うことのあいだには開きがあるためです。回答者は相手の期待に沿った答えを選びやすく、購入意向は実際の購買率よりも高く出る傾向にあります。両者は互いの代替になるものではなく、市場調査で仮説の材料を集め、テストマーケティングでその仮説を行動で確かめるという順序で組み合わせるのが一般的です。
在庫を持たない商材でも必要な理由
テストマーケティングの必要性は、在庫リスクの回避として説明されることが多くあります。売れない商品を大量に抱えると資金が固定され、事業そのものを圧迫するためです。
ただしこの説明は、BtoBのサービスやSaaS、受託型の事業には当てはまりにくいところがあります。在庫の代わりに固定されるのは、開発工数と、その期間に別の仮説を試せなかった時間だと考えています。半年かけて作り込んでから引き合いが立たないと分かった場合、失われるのは開発費だけではありません。半年分の人件費と、他の可能性を試せたはずの半年が同時に消えます。在庫を持たない事業のほうが撤退のコストは軽いと見られがちですが、時間で測ると差は小さくなります。
検証する対象も変わってきます。物販であれば「この価格で買うかどうか」を確かめますが、無形商材ではその手前から確かめる必要があります。そもそもその課題を解決したいと考えている人が市場にどれだけいて、どんな言葉で解決手段を探しているのか。ここが分からないまま作り込むと、完成した時点で行き先がなくなります。
テストマーケティングの手法7種 何が分かって、何が分からないか

手法を選ぶ前に確かめておきたいのが、その手法で何が分からないかです。手法ごとに観測できる範囲は決まっており、範囲の外側は、いくら予算をかけても見えるようになりません。ところが手法の紹介は「何が分かるか」に寄りやすく、範囲の外側が曖昧なまま実施に進むことがあります。
7つの手法を5つの軸で比較する
| 手法 | 費用の目安 | 期間の目安 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|---|---|
| 地域限定・店舗テスト販売 | 数百万円〜 | 1〜6か月 | 実売上、リピート、棚での見え方 | 他エリアへの外挿の妥当性 |
| モニター調査(HUT) | 数十万円〜 | 2〜4週間 | 使用感、改善点、継続利用の意向 | 買うかどうかの行動 |
| 会場調査(CLT) | 数十万〜数百万円 | 1〜2週間 | 第一印象、パッケージ評価、比較時の反応 | 買うかどうかの行動 |
| Webアンケート | 無料〜数十万円 | 1〜2週間 | 認知、意向、属性ごとの傾向 | 買うかどうかの行動 |
| SNS反応テスト | 実質無料〜 | 2週間〜3か月 | 話題性、拡散のしやすさ | 既存フォロワー以外の反応 |
| 購入型クラウドファンディング | 売上の10〜20%程度 | 1〜3か月 | 実際に支払われた金額と人数 | 一般販売時の再現性 |
| LP+広告テスト | 数万円〜数十万円 | 2〜4週間 | 検索需要の有無、訴求ごとの反応、問い合わせ数 | 受注率、LTV |
費用は依頼先と規模で大きく動くため、いずれも目安として見てください。ここで見ていただきたいのは金額よりも右端の列です。上から4つの手法は、購買という行動そのものを観測できません。 意見や意向を精度高く集める手法であって、支払いが発生するかどうかは別の方法で確かめる必要があります。
一方、下の3つは行動を観測できますが、それぞれ別の限界を抱えています。クラウドファンディングで集まった支援は、応援という文脈が乗った購買です。LP+広告で得られるのは問い合わせや資料請求までで、そこから先の受注率は追跡の設計を別に組まない限り分かりません。どの手法にも観測できない領域があり、万能なものは存在しないと考えています。
オフラインの手法
地域限定販売と店舗でのテスト販売は、本番に最も近い条件で結果が出ます。中規模都市を選び、本番と同じプロモーションを行って売れ行きを見る形が一般的です。実際の棚に並べたときの見え方や、競合商品と並んだときの選ばれ方まで確かめられます。費用と在庫の負担が大きいため、全国展開の直前に置かれることが多くあります。
モニター調査は、商品を実際に使ってもらったうえで評価を集める手法です。化粧品や食品、家電のように一定期間の使用が前提になる商材に向いています。会場調査は、対象者を一か所に集めて反応をその場で観測します。表情や手に取るまでの時間まで見られるため、パッケージや第一印象の評価に適しています。
この2つは意見の質が高い代わりに、提示された側の立場で答えるという性質が残ります。目の前で説明を受けた商品に対して、否定的な評価は出にくくなるためです。
オンラインの手法
Webアンケートは、費用と期間の面で最も始めやすい手法です。無料のフォームでも実施でき、属性ごとの傾向を早く把握できます。SNS反応テストは、投稿への反応から話題性を測ります。ただし、どちらの結果も既存の接点を持つ層に偏りやすいところがあります。自社を知っている人の反応は、初めて見る人の反応より好意的に出ます。
購入型クラウドファンディングは、在庫を持たないまま先行販売ができ、支払いが発生したという事実がそのままデータになります。集まった金額と人数は社内の説明材料としても、取引先との交渉材料としても機能します。在庫リスクを抱える物販であれば、費用対効果の面で有力な選択肢です。
LP+広告テストは、商品を作る前でも実施できる点が他と異なります。検証用のページを用意して広告を配信し、どの訴求にどれだけ反応が出るかを測ります。物理的な商品がなくても実施できる代わりに、確かめられるのは問い合わせや事前登録までです。
商材別に見た向き不向き
| 商材 | 向いている手法 | 理由 |
|---|---|---|
| 物販(在庫を持つ) | 地域限定販売、クラウドファンディング、モニター調査 | 在庫リスクの回避が最優先になるため |
| BtoC無形サービス | Webアンケート、SNS反応テスト、LP+広告 | 試用の設計が難しく、需要の有無から確かめる |
| BtoBサービス・SaaS | LP+広告、既存顧客へのヒアリング、実証導入 | 母数が小さく、消費者パネルでは対象に当たらない |
| 高単価の法人向け商材 | 実証導入、ヒアリング | 意思決定に複数人が関与し、単体のテストで判定できない |
BtoBの商材で注意していただきたいのが、消費者向けのパネルを使った調査が機能しにくい点です。購買の意思決定者が母集団のなかに数えるほどしかいないため、統計的に扱える人数が集まりません。 母数の小ささは、手法の優劣ではなく前提条件の違いによるものです。BtoBでテストマーケティングを検討する場合は、人数を集める発想から、少数でも意思決定者に届く経路を作る発想に切り替える必要があります。
テストマーケティングの費用相場と期間

費用は手法よりも「確かめたい仮説の数」で決まる
手法ごとの相場は前の表のとおりですが、同じ手法でも見積もりが数倍変わることがあります。分かれ目になるのは、確かめたい仮説をいくつ立てているかです。
顧客セグメントを3つ、訴求を3つ確かめようとすると、組み合わせは9通りになります。1つの組み合わせを判定するために必要なサンプル数は変わらないため、費用も期間もほぼ組み合わせの数だけ増えていきます。予算が想定を超えたときは、手法を安いものに替える前に、仮説を絞れないかを先に検討してみてください。
費用の内訳は、おおむね次の3つに分かれます。
- 実施費:広告費、モニター謝礼、会場費、出店料など
- 制作費:LP、試作品、調査票、広告クリエイティブの用意
- 分析費:データの集計とレポートの作成
外部に依頼する場合、見積もりで見落とされやすいのが3つ目です。データは納品されても、判断に使える形に整理する工程が含まれていないことがあります。社内で報告に使うまでに誰が何をするのかを、発注の時点で確認しておくとよいでしょう。
期間は「何日やるか」ではなく「何件集まるか」で決める
期間を先に決めてしまうと、必要な件数が集まらないまま終了するという事態が起こります。3か月と決めて始めたものの、集まったのが5件で、その5件から何も判断できないという形です。先に決めるべきは、判断に必要な件数のほうです。
ただしBtoBの商材では、件数だけを基準にすると今度は終わらなくなります。母数そのものが小さく、目標件数に到達しないまま予算だけが消えていくためです。「目標件数に達するか、上限期間を迎えるか、早いほうで終了する」という二重の基準を先に置いておくと、どちらの失敗も避けられます。
上限期間の目安は、オンラインの手法であれば2週間から1か月です。この範囲であれば、途中で設定を変えたくなる誘惑にも耐えられます。設定を動かすと前後のデータが比較できなくなり、結果として判定材料が減ります。
予算の3割は空振りする前提で組む
ここからは、実際に運用した検証の数字をもとにお伝えします。BtoB向けのレンタル・リース系サービスで、約10万円、2週間、30キーワードの規模で実施したものです。
この検証では、問い合わせに一件もつながらないまま消化した費用が、全体の約3割ありました。内訳は、まだ業者を探す段階に入っていない情報収集層が使う広い言葉と、隣接する業種の言葉です。事前に外れそうだと分かっていたわけではなく、確かめたからこそ外れだと判定できた部分になります。
この3割を無駄と呼ぶかどうかは、解釈が分かれるところです。当たる言葉だけを最初から選べるのであれば検証は要りません。当たり外れを判定するために出しているので、外れた分も検証の成果に含まれます。
実務上の含意は、予算の組み方のほうにあります。10万円で目標件数に届く設計ではなく、7万円で届く設計にしておくと、想定どおりに進みます。全額が有効に働く前提で予算を組むと、着地の件数が計画を下回り、判断がつかないまま追加予算の相談が必要になります。
なお、3割という比率は1件の検証で観測した数字です。商材の検索需要の広さや、事前のキーワード設計の精度によって変わります。他社の検証でも同じ割合になると考えているわけではなく、空振り分をゼロで見積もらないという考え方のほうを持ち帰っていただければと思います。
テストマーケティングの進め方5ステップ

手法と予算が決まったら、実施までの手順は5つに整理できます。
- 確かめたい仮説を1文にする。 「誰の、どの課題に対して、いくらの価格で需要があるか」という形まで落とすと、終わったあとの判定がしやすくなります。
- 判定基準を先に決める。 どの数字がどこを超えたら続け、下回ったら止めるのかを、開始前に関係者で合意しておきます。基準の作り方は次の章で扱います。
- 手法とセグメントを選ぶ。 ここでセグメントを分けずに始めると、反応の良い層と悪い層が混ざったまま平均値だけが残り、続けるか止めるかの二択しか出せなくなります。
- 実施して測る。 期間中は設定を動かさず、前後を比較できる状態を保ちます。途中で手を入れたくなったときは、次の検証に回してください。
- 結果を次の行動につなぐ。 そのまま進める、対象を絞って再検証する、別の仮説に切り替える。この3つのどれを選ぶかを決めるところまでが検証です。
5つのうち、結果の使い道を最も左右するのが2番目です。基準を後から作ると、判定はほぼ「続ける」に傾きます。数字を見てから解釈を組み立てることになり、都合の良い指標を選べてしまうためです。
実施前に決めておく判定基準
判定基準は、3つの要素を決めれば作れます。どの指標を、どの順番で見るのか。いくらまでなら許容できるのか。そして、どこで線を引くのか。順に見ていきます。
見る順番は「成約 → 商談 → 問い合わせ → クリック → 表示回数」
BtoBの商材では、成約から見るのが原則です。売上につながったかどうかが最終的な判断材料になるためで、上流の指標がいくら良くても、成約が出ていなければ事業として成立しません。
ただし2週間から1か月、10万円前後という規模の検証では、成約まで届かないことがあります。商談期間が数か月に及ぶ商材であれば、検証期間中には決着がつきません。その場合に限って、1段ずつ下の指標に下りて判断するという構造にします。最初からクリック率で見にいくのではなく、上から順に見て、判定がつかないときだけ下りてください。
| 見る順 | 指標 | ここまで届けば言えること | 届かなかった場合の意味 |
|---|---|---|---|
| 1 | 成約 | 商流が成立し、売上として回収できる | 検証期間が商談期間より短い可能性がある |
| 2 | 商談 | 問い合わせの質が担保されている | 問い合わせが冷やかしに寄っている |
| 3 | 問い合わせ | 購買の意向が実在する | 訴求か価格に問題がある |
| 4 | クリック | 訴求の言葉が届いている | 見出しと検索意図がずれている |
| 5 | 表示回数 | 市場そのものは存在する | そもそも探されていない |
下に行くほど「まだ何も言えない」を意味します。特に5段目で止まった場合、必要なのは訴求の見直しではなく市場選定のやり直しです。ここを取り違えると、需要のない場所で見出しだけを書き換え続けることになります。
許容コストは自社の粗利から逆算する
いくらまで許容できるかは、他社の相場ではなく自社の数字から出します。式は次のとおりです。
許容できる獲得単価=成約1件あたりの粗利 ÷ 成約1件に必要な問い合わせ件数
分母にあたる「成約1件に必要な問い合わせ件数」は、既存事業の営業データから持ってこられます。過去1年の問い合わせ件数を成約件数で割れば出ます。この数字を持っていない場合は、検証の中で測ることになります。
参考として、実際に運用した検証の実績をお伝えします。BtoB向けのレンタル・リース系サービスで約10万円を投じ、問い合わせが15件、そのうち商談に進んだのが5件、成約に至ったのが2件でした。成約1件あたりに必要な問い合わせは、およそ7.5件という計算になります。
この7.5件を自社の粗利に当てはめると、許容できる獲得単価が出ます。成約1件の粗利が50万円であれば約6.6万円、10万円であれば約1.3万円です。同じ獲得単価でも、商材によって余裕とも赤字とも判定されます。
ただし7.5件という数字は、1件の検証で、しかも成約2件から算出したものです。業種が違えば商談化率も成約率も変わるため、他社の商材にそのまま当てはめられる数値ではありません。使っていただきたいのは数字そのものではなく、分母を自社のデータで埋めるという計算の型のほうです。
絶対値ではなく「セグメント間の格差」で見る
獲得単価やコンバージョン率の絶対値は、業種と検索意図によって大きく動きます。他社の数値を基準に置いても、自社で再現される保証はありません。
代わりに使えるのが、セグメント間の格差です。同じ検証では、全体の獲得単価が約6,500円だったのに対し、最も効率の良かったセグメントが約3,600円、最も悪かったセグメントが約7,800円と、2倍以上の開きがありました。効率の良いセグメントは予算配分が全体の2割弱にとどまっていたにもかかわらず、問い合わせ全体の3分の1を生んでいます。
全体の平均だけを見れば「獲得単価6,500円、おおむね想定内」という結論で終わります。セグメントに分けた瞬間、判定は「このセグメントに絞って継続し、他は停止する」という具体的な指示に変わりました。
絶対値は再現しませんが、最良と最悪で2倍以上の開きがあるかどうかという見方は、業種を越えて使えます。開きがあるなら、判定は続けるか止めるかの二択ではなく、どこに絞るかの問題です。開きが出ないなら、セグメントの切り方が粗いか、市場が均質かのどちらかを疑ってください。
判定基準表
以上を1枚にまとめると、次の形になります。基準の列は、検証を始める前に自社の数字で埋めてください。
| ゲート | 判定項目 | 基準(開始前に記入) | 実績 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 検索需要が存在するか | 表示 回以上 | ||
| 2 | 訴求が届いているか | クリック率 %以上 | ||
| 3 | 購買意向があるか | 問い合わせ 件以上 | ||
| 4 | 許容コストに収まるか | 獲得単価 円以内 | ||
| 5 | 仮説セグメントに反応があったか | 想定した層から 件以上 | ||
| 6 | セグメント間に差が出たか | 最良と最悪で2倍以上 |
基準を埋めるタイミングと、合意する相手を決めておくことをおすすめします。実施の担当者だけで決めた基準は、結果が出たあとに動かせてしまいます。決裁者を含めて合意し、その場で記録に残しておくと、判定は機械的な作業になります。数字を見てから解釈を組み立てる必要がなくなり、報告の場で議論すべきことも「次にどうするか」だけに絞られます。
テストマーケティングの依頼先6種と選び方

テストマーケティングを外部に頼む場合、依頼先は大きく6つに分かれます。それぞれ得意な領域が違い、同時に、立場から自動的に決まる制約も抱えています。制約は能力の問題ではなく、何を売っているかによって扱える範囲が決まるという構造の話です。
依頼先6種の比較
| 依頼先 | 費用の目安 | 得意なこと | 構造上、扱いにくいこと |
|---|---|---|---|
| 内製 | 実費のみ(数万円〜) | 商材の理解、速い意思決定 | 客観性の担保、本業からの工数の捻出 |
| 調査会社 | 数十万〜数百万円 | 設計の精度、統計的な扱い | 広告配信やページ運用など実行の数値 |
| プラットフォーム(出店・クラウドファンディング) | 区画料数万円〜、または売上の10〜20%程度 | 実際の購買行動の観測 | 自社の場に載らない商材の検証 |
| 販促実行会社 | 数十万〜数百万円 | 店頭での反応、購入者への深い聞き取り | 店頭を持たない商材の評価 |
| 広告代理店 | 広告費+運用手数料(広告費の20%前後) | 配信の最適化、獲得効率の改善 | 「出稿しない」という結論 |
| 検証専門サービス(カリアド) | 25万円+広告費(実費) | 需要の有無の判定、訴求ごとの反応 | 受注率やLTVなど中長期の指標 |
右端の列を見ていただくと、どの依頼先にも扱いにくい領域があることが分かります。調査会社は設計の専門性を持ちますが、広告を配信した結果の数値は業務範囲の外です。プラットフォームは購買行動そのものを観測できる代わりに、自社の場に載らない商材については判断材料を出せません。広告代理店は配信の改善を得意としますが、配信を止めるという提案は自社の売上を減らす方向に働きます。
この表の使い方は、得意な列で選ぶのではなく、自社が今いちばん知りたいことが右端の列に入っていないかを確認する形になります。 知りたいことが扱いにくい領域に入っている依頼先を選ぶと、報告書は受け取れても判断はつきません。
なお、6つ目の検証専門サービスは私たちが提供している領域にあたるため、扱いにくいこととして受注率とLTVを挙げました。検証の期間内には商談が決着しない商材があり、そこは追跡の設計を別に組む必要があります。
内製でやる場合の判断基準
外注が前提になっているわけではありません。次の3つが社内に揃っていれば、内製したほうが速く、費用も抑えられます。
- 広告アカウントを運用した経験がある人がいる
- ページを1週間程度で用意できる制作リソースがある
- 計測の設計、つまり何をコンバージョンとして数えるかを決められる人がいる
3つのうち2つまで揃っているなら、足りない部分だけを単発で頼む形が合理的です。丸ごと外注する必要があるのは、3つとも欠けている場合か、社内の期待が強すぎて客観的な判定が難しい場合に限られます。
後者は見落とされやすい理由です。数か月かけて温めてきた企画は、担当者自身が結果を厳しく読めなくなります。外部に頼む価値が、専門性ではなく判定の客観性のほうにあるケースは実際に存在します。
「何もしない」という選択肢
テストマーケティングをしないほうが合理的な場面もあります。次の3つのいずれかに当てはまるなら、検証の費用と時間は他に回したほうがよいでしょう。
まず、結果に関わらず進めることが既に決まっている場合です。経営判断として着手が確定している企画に対して検証を挟んでも、報告のための資料が1つ増えるだけになります。
次に、検証しても打ち手が変わらない場合です。結果がAでもBでも同じ行動を取るのであれば、その検証には判断を変える力がありません。実施する前に「この結果が出たら何を変えるのか」を書き出してみて、どのパターンでも同じ答えになるなら見送ってください。
最後に、検証の費用が、失敗したときの損失に近づいている場合です。数十万円で作れるものを確かめるために数十万円かけるのであれば、作ってしまったほうが速く、しかも作った物は残ります。検証は損失を小さくするための手段であって、それ自体が目的になると本末転倒です。
依頼前に確認したい3つの質問
依頼先を絞ったら、見積もりを取る前に次の3点を聞いてみてください。回答の具体性で、判断材料が手に入るかどうかがおおむね分かります。
1つ目が、この手法で分からないことは何か、という質問です。分かることだけを説明する相手には、範囲の外側について改めて確認しておく必要があります。
2つ目が、判定基準をいつ決めるか、という質問です。実施前に基準を合意する進め方になっているかどうかで、報告の性質が変わります。終わってから解釈を組み立てる形だと、判定は続ける方向に傾きます。
3つ目が、生データが納品されるかという質問です。集計済みのレポートだけでは、社内で別の切り口から見直すことができません。キーワードごと、セグメントごとの生の数字が付いてくるかを確認しておいてください。
検証用のLPと少額の広告で需要を確かめる進め方について、無料でご相談いただけます。 自社で実施する場合の設計についてもお答えしていますので、依頼先を比較している段階でもお声がけください。
テストマーケティングが空振りする3つの理由

費用をかけて実施したのに、終わったあとで何も判断できない。この状態になる原因は、手法の選択よりも設計の側にあります。実際に起きやすい3つを挙げます。
理由1:自社が強みだと思っている訴求が、市場の検索語ではない
先ほどのBtoB向けレンタル・リース系サービスの検証では、事前に3つの訴求を用意していました。設備の先進性を伝える見出し、管理体制を仕組み化していることを伝える見出し、そして小ロットから対応できることを伝える見出しです。いずれも、その会社が競合と比べて明確に優れていると考えていた点でした。
結果は次のとおりです。3つのうち2つは、2週間を通して表示回数がゼロでした。 残る1つは11回表示されたものの、クリックは一度も発生していません。売れるかどうか以前に、その言葉で探している人が市場にいなかったことになります。
この結果は、聞く形式の調査では観測できません。「小ロットから対応できる点は魅力的ですか」と提示すれば、一定の割合は魅力的だと答えます。提示された選択肢を評価する場面と、自分から言葉を入力して探す場面とでは、出てくる答えが変わります。
自社の強みが無意味だったという話ではありません。この検証から得られた結論は、強みを捨てるということではなく、置き場所を変えるということでした。探すときに使われる言葉で見つけてもらい、見つけてもらったあとのページの中で、強みを使って差別化する。順序を入れ替えることで、同じ材料が機能するようになります。
理由2:平均値で判定してしまう
全体の平均だけを見ると、判定は「そこそこ」に着地しがちです。良い層と悪い層が打ち消し合うためで、停止する理由も、拡大する理由も出てきません。実施した意味が最も薄くなる終わり方です。
平均が動きにくいのには構造的な理由があります。範囲の広い言葉ほど表示回数もクリック数も多く集まるため、全体の数値は広い層に引っ張られます。狭くて反応の良い層は、件数が少ないぶん平均のなかに埋もれます。予算配分の小さいセグメントほど、平均を見ているかぎり発見できません。
対処は実施前の設計にあります。どの単位で結果を割るかを、開始前に決めておいてください。終わったあとから分けようとしても、そもそも分けて配信していなければデータは戻ってきません。
理由3:既に接点のある相手に確かめてしまう
手軽さから、既存顧客や取引先、社内の別部署に意見を求めることがあります。回答は集まりますが、その回答は好意的に偏ります。関係のある相手は、否定的な評価を口にしにくい立場にあるためです。
同じことが、自社のSNSアカウントやメールマガジンを使った反応テストにも起きます。すでに自社を知っている人の反応は、初めて見る人の反応より必ず良く出ます。フォロワーの反応が良かったのに一般販売で伸びないという結果は、商品の問題ではなく、測った相手の問題であることがあります。
確かめたいのは、自社をまだ知らない人が反応するかどうかです。 検証の対象は、可能なかぎり接点のない層に置いてください。既存の関係者から得られるのは、改善のヒントとしては有効でも、需要が存在するかどうかの判定材料にはなりません。
LP+広告でテストする場合の実際
商品を作る前に実施できる手法
検証用のページを1枚用意して広告を配信し、反応を測る。この手法の特徴は、実物がなくても実施できる点にあります。試作品も在庫も必要としないため、開発に着手する前の段階で、需要が存在するかどうかを確かめられます。
前半の比較表では、この手法で分かることを「検索需要の有無、訴求ごとの反応、問い合わせ数」と書きました。実際の購買までは観測できないため、購買行動を直接見にいく手法と比べると、判定材料としては一段手前で止まります。ただし、コンバージョンを問い合わせに置いたうえで、その先を営業側で追跡する設計にすれば、成約まで数字をつなぐことはできます。 以下は、その形で運用した検証の記録です。
実際の検証結果
BtoB向けのレンタル・リース系サービスで、新しい顧客セグメントに需要があるかを確かめた案件です。条件は次のとおりでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手法 | 検索広告+検証用LP |
| 期間 | 2週間 |
| 広告費 | 約10万円 |
| 検証キーワード | 30語(完全一致15/フレーズ一致15) |
| コンバージョンの定義 | フォームからの問い合わせ・資料請求 |
結果は、表示回数が1,850回、クリックが129回、クリック率が約7%でした。問い合わせは15件で、クリックからの転換率は約12%です。獲得単価は約6,500円になりました。
ここから先は、広告の管理画面には出てこない数字です。 15件の問い合わせのうち、商談に進んだのが5件、成約に至ったのが2件でした。広告費を成約数で割ると、成約1件あたりの広告費は約5万円という計算になります。
この数字が出せたのは、問い合わせの一件ずつに、どのキーワードから来たかを記録して営業側に渡していたためです。追跡の仕組みを検証の開始時に組んでおかないと、広告の数字と営業の数字は別々の場所に残り、後からつなぐことができません。
セグメント別の結果
同じ検証を、顧客セグメントごとに分けて配信していました。全体の数字だけでは見えない差が出ています。
| セグメント | クリック | クリック率 | 問い合わせ | 転換率 | 獲得単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| A:宿泊系の小規模事業者 | 25 | 約17% | 5 | 20.0% | 約3,600円 |
| B:同業のレンタル領域 | 16 | 約16% | 2 | 12.5% | 約7,000円 |
| C:宿泊施設(大規模) | 8 | 約7% | 1 | 12.5% | 約7,300円 |
| D:サービス名の汎用語 | 75 | 約6% | 7 | 9.3% | 約7,800円 |
| E:隣接する業種 | 5 | 約3% | 0 | 0% | — |
| 全体 | 129 | 約7% | 15 | 約12% | 約6,500円 |
クリック数が最も多かったのはDです。件数としても最も多く問い合わせを生んでいますが、獲得単価は全体で最も高くなりました。反対にAは、クリック数がDの3分の1にとどまりながら、転換率で2倍以上の差をつけています。Eは配信されたものの、問い合わせは一件も発生しませんでした。
判定がどう変わったか
全体の数字だけで判定するなら、結論は「獲得単価6,500円で問い合わせが15件、想定の範囲内なので継続」となります。この判定からは、次に何をすればいいのかが出てきません。
セグメントに分けたことで、判定は次の3つに分かれました。Aに絞って専用のページを作り直し、予算を寄せて再検証する。Eは停止する。Dは、汎用語であるがゆえに購買の段階に入っていない検索が混ざっているため、語を絞り込んだうえで継続する。同じデータから、続けるか止めるかの二択ではなく、どこに寄せるかという指示が出せる状態になりました。
依頼元にとって想定外だったのは、Aが事前の仮説で主要ターゲットに置かれていなかった点です。予算配分も全体の2割弱にとどめていました。当初の想定と実際の反応がずれていたわけですが、2週間と約10万円の範囲でずれに気づけたことが、この検証の成果にあたります。
この手法で分からないこと
この検証で確かめられたのは、需要が存在すること、そしてどのセグメントに寄せるべきかまでです。以下は確かめられていません。
- 受注率が継続的にこの水準で推移するかどうか
- 顧客あたりの取引期間と、そこから得られる利益の総額
- 予算を10倍にしたときに、同じ効率が保たれるかどうか
3つ目は特に注意していただきたい点です。検索広告は、狭くて反応の良い層から順に配信されるため、予算を増やすと獲得単価は上がる方向に動きます。 検証時の数値をそのまま本格展開の見込みとして事業計画に置くと、計画は必ず未達になります。検証で分かるのは需要の有無と優先順位であって、将来の獲得効率ではありません。
なお、ここで挙げた数値はすべて1件の検証によるものです。業種、検索需要の大きさ、単価によって数値は動きます。他社の検証で同じ結果が出ると考えているわけではなく、この規模でここまでは判定できる、という範囲の目安として見ていただければと思います。
判断の精度は、始める前に決まっている
テストマーケティングは、市場の反応を眺めるための施策ではなく、続けるか止めるかを決めるための手続きです。判定の精度は、開始前にどこまで基準とセグメントを決めておいたかで決まります。
その新規事業、「売れるか」を2週間で確かめられます
カリアドは、新規事業の需要検証に特化したサービスです。
調査レポートや社内の議論では、結局「売れるかどうか」は分かりません。検証用LPを作り、実際に広告を配信し、見込み客が反応するかどうかを数値で確認します。
開発に数百万円を投じる前に、まず市場に聞く。それが最も安く、最も速い意思決定の方法だと考えています。
期間は2週間程度、費用は定額。検証レポートと広告の生データをお渡しするので、そのまま社内報告にお使いいただけます。
まずは無料相談から。検証すべき仮説の整理だけでもお役に立てます。

