事業計画の「市場性の根拠」は何を書けば通るのか 強度の5段階と判定シート

この記事でわかること
  • なぜ「市場規模が大きい」は根拠にならないのか
  • 根拠の強度は5段階で整理できる
  • 統計も実績もない市場で、需要の「不在」をどう示すか
  • 実際に需要を測ると、どこまで分かってどこから分からないか
  • 自社の強みは、市場が検索している言葉とは限らない

事業計画書の市場性の欄を前にして、どのデータを持ってくれば根拠として通るのか判断がつかない。そうした状態でこの記事にたどり着いた方が多いのではないでしょうか。

結論から書きます。市場性の根拠として評価されるのは、市場の大きさを示すことではありません。自社の売上予測が外れにくい理由を、読み手が自分で検算できる形にすることです。 そして検算できる材料は、統計を探しに行く前に手元にあることが少なくありません。

よくある問いこの記事での答え
何を書けば根拠になるのか市場の規模を示す材料と、自社が取れる分を示す材料の2つ。片方だけでは通らない
統計に自社の市場がない場合はどうするか独自推計に進む前に、社内の失注記録と、実際の見込み客の反応という2つの材料がある
どこまでやれば十分なのか提出先によって変わる。判断のための物差しを2つ用意した

本文の後半では、実際に10万円前後の広告費で需要を測った案件の数値を使い、その予算で何が確定して何が確定しないのかまで示します。

目次

なぜ「市場規模が大きい」は根拠にならないのか

事業計画の市場性の欄を埋めるとき、まず市場規模のデータを探しに行く方が多いのではないでしょうか。ところが、規模の数字を大きく見せるほど評価が上がるわけではなく、かえって逆に働くことがあります。読み手が確かめようとしているのは市場の天井の高さではなく、その市場のなかで自社が立てた売上予測が外れにくい理由だからです。

読み手によって、求める根拠は違う

事業計画書の提出先は一つとは限りません。補助金の審査員、融資を判断する金融機関、社内の投資委員会、出資を検討する投資家では、同じ「市場性」という項目を見ていても、そこから読み取ろうとしていることが異なります。

提出先主に確かめていること根拠として効く材料
補助金の審査員公募要領に定められた審査項目を満たしているか公募要領が指定する客観的なデータ・統計
金融機関返済原資となる売上が立つか既存取引の実績、引き合い、内諾
社内の投資委員会撤退の判断がつく計画になっているか検証済みの前提と未検証の前提の区別
投資家事業がどこまで伸びうるか市場の構造変化、獲得可能な市場の定義

補助金については、審査項目が公募要領に明記されています。何をもって市場性を評価するかが文書として示されているため、そこから逆算して記述を組み立てられます。一方で社内の投資委員会に出す場合は、明文化された基準がないことのほうが多く、「どうなったら撤退するのか」まで書けているかどうかで通り方が変わってきます。同じ事業でも、提出先によって補強すべき箇所は変わると考えてください。

突き返される記述には3つの型がある

提出先が違っても、指摘される箇所には共通した型があります。

ひとつめは、マクロ統計を引用しただけで終わっている記述です。国内市場が年平均で成長している、といった数字を置くところまでは進むものの、その市場が伸びることと自社の商品が売れることをつなぐ論理が書かれていません。読み手はその接続部分を探しながら読むため、そこが空いていると市場規模の数字自体が意味を持たなくなります。

ふたつめは、算出過程のない目標数値です。前年比プラス10%、3年後にシェア1%といった形で数字は入っているものの、なぜその水準になるのかを追いかけられません。シェア1%という設定は控えめに見えますが、控えめであることと根拠があることは別の話です。

みっつめは、自社の強みを並べた記述です。強みは競争優位性の説明であって、市場性の説明ではありません。しかも強みの評価は社内で下したものですから、市場が同じ評価をしているかどうかは、それ自体が確かめるべき対象になります。

この3つに共通しているのは、書かれた数字を第三者が自分でたどり直せないという点です。市場性の根拠として評価されるかどうかは、データの出所が公的かどうかではなく、読み手が筋道を検算できるかどうかで決まります。 出所の格が高いデータを持ってきても、そこから自社の売上予測までの道筋が通っていなければ、根拠としては機能しません。

逆に言えば、検算できる形になっていれば、材料は公的統計である必要はありません。次の章では、根拠として使える材料を強度の順に整理していきます。

根拠の強度は5段階で整理できる

市場性の根拠として使える材料は、公的統計だけではありません。実務では複数の材料を組み合わせることになりますが、その順番を取り違えると、手元にある強い材料を使わないまま統計を探しに行くことになります。ここでは材料を強度の順に並べ、いま書いている記述がどこに位置しているかを確認できる形にしておきます。

何が強度を決めるのか

強度を決めるのは、データの出所の格ではありません。前章で触れた検算可能性に加えて、「自社の売上予測までの距離」という軸で見ます。公的統計は出所としては最も信頼されるものの、示しているのは市場全体の姿であって、自社の商品が売れるかどうかには答えていません。読み手が自分で埋めなければならない論理の隙間が大きいほど、根拠としての強度は下がります。

強度根拠の種類何を示せるか主に効く提出先弱点
1実際の見込み客の反応(実測)需要の有無、反応した訴求と反応しなかった訴求すべて測定した範囲の外には広げられない
2自社の受注実績・引き合い・過去の失注既存領域での需要と価格の妥当性金融機関、社内の投資委員会新規領域に当てるには類推が入る
3公的統計市場の規模と方向補助金の審査員、金融機関自社の売上への接続を別に書く必要がある
4民間の調査レポート市場の規模と予測投資家調査の定義と手法が自社の市場と一致しない場合がある
5独自推計推計の論理そのもの算出過程の書き方しだい前提がひとつ崩れると全体が崩れる

この順位は自社の売上予測との距離で並べたものですから、提出先の要件とは別の話になります。補助金のように公募要領が客観的データの提示を求めている場合、強度3の材料は順位に関わらず必須です。強度の高い材料を持っていても、指定された形式を満たしていなければ審査の土俵に乗りません。

自分の記述がどこに位置するかを確かめる

単独で完結する根拠は存在しません。実務では、市場の規模を強度3か4で示したうえで、自社がそこからいくら取れるのかを強度1か2で裏づける、という組み合わせになります。前章で挙げた「マクロ統計を引用しただけ」の記述が突き返されるのは、後半が欠けているためです。

確かめ方は単純です。いま書いてある市場性の記述から数字を一つずつ拾い出し、それぞれがどの強度の材料から来ているかを書き添えていきます。すべてが強度3以上に集まっていれば、市場の話はできているが自社の話ができていない状態です。 逆に強度1と2しかない場合は、市場の広がりが示せていないため、提出先によっては規模の裏づけを足すことになります。

不足しやすいのは強度1と2の側です。統計は検索すれば出てきますが、自社の手元にある材料は社内のどこかに散らばったままで、探しに行く発想そのものが出てこないためです。次の章では、多くの提出先で求められる強度3と4の扱い方を先に整理し、そのうえで手元の材料の作り方に進みます。

統計から根拠を作る

強度3と4にあたる公的統計と民間の調査レポートは、多くの提出先で求められる材料です。ここでの作業は探すことよりも、探す前に何を探すのかを決めることに比重があります。

市場定義を先に固定する

データを探し始める前に、自社が対象とする市場を文章で確定させてください。決めるのは、誰に売るのか、どの用途に使われるのか、どの地域が範囲なのか、どの価格帯なのかの4点です。この4点が決まっていない状態で統計を探すと、検索して最初に出てきた「国内◯◯市場」の数字を採用することになり、前章で触れた接続の欠けた記述になります。

市場規模をTAM・SAM・SOMの3層で示す方法が知られていますが、この3層はいずれも市場定義から導かれるものです。定義が広すぎれば全体の数字が大きくなり、その分だけ自社が取れる割合の説明が難しくなります。市場定義を誤ると、以降の数字はすべて作り直しになります。 先にここへ時間を使うほうが、結果として早く書き終わります。

データの出所ごとに、得意な領域が違う

市場定義が決まったら、その定義に近いデータを持っている出所を選びます。費用については、ここでは一般的なレンジとして示しています。

出所入手のしやすさ費用の目安ニッチ市場への対応
官公庁統計(e-Statなど)公開されており、誰でも取得できる無料産業分類に沿った区分のため、細分化された市場は拾えない
業界団体の統計団体サイトで公開、または会員向け無料から数千円程度業界単位では詳しいが、団体が存在しない領域は対象外
民間の調査レポート購入手続きが必要数万円から数十万円程度調査対象の定義が自社の市場と一致するかを購入前に確認する
受託の市場調査調査会社への発注数十万円から数百万円程度定義を指定できるが、期間と費用がかかる

官公庁統計は日本標準産業分類に沿って区分されているため、複数の分類にまたがる新しい商材や、分類のなかの一部しか該当しない事業では、そのままの数字を使えません。民間の調査レポートは市場の切り口が細かい一方で、調査会社ごとに市場の定義が違います。購入前に目次と定義の記載を確認し、自社の市場定義と照らし合わせてください。

出典と対象期間は必ず書き添える

統計を引用するときは、調査名、調査主体、対象期間、公表年の4つを記載します。これは体裁の問題ではなく、読み手が同じ資料にあたって検算できるようにするための情報です。出典のない数字は、前章で挙げた算出過程のない目標数値と同じ扱いになります。

成長率を使う場合は、その成長率が何年から何年までの実績なのか、それとも予測値なのかを区別して書いてください。予測値を実績のように書くと、記述全体の信頼性が疑われます。過去の実績と将来の予測が混ざっている記述は、読み手が最初に指摘する箇所です。

自社の手元から根拠を作る

強度2にあたる材料は、社内にすでに存在しています。ただし市場性の根拠として使える形で保管されていることは少なく、担当者の記憶や個別のメールのなかに散らばったままになっています。ここでは、そこから何を取り出せるのかを整理します。

既存顧客からの引き合いと内諾を記録に戻す

新しい商材について既存の取引先から問い合わせを受けていた場合、その記録は市場性の根拠になります。統計が示すのは市場全体に需要があることですが、引き合いの記録が示すのは自社に対して需要があることです。 売上予測までの距離が短いため、強度としては統計を上回ります。

計画書に書くときは、件数と時期、そして先方が何を求めていたのかを記載してください。実際に発注まで至らなかった引き合いも含めて構いません。発注に至らなかった理由が価格なのか納期なのか仕様なのかは、それ自体が市場の情報として読み手に伝わります。

過去の失注データを回収する

断った案件の記録は、引き合い以上に扱われないまま残っていることが多い材料です。対応できる体制がなかった、ロットが小さすぎた、地域が遠かったといった理由で受けなかった案件が積み上がっているなら、その件数は「新規事業を始めたときに取れる需要」の下限を示します。

下限という点に意味があります。予測ではなく、すでに発生した事実の集計だからです。読み手は推計の前提を疑うことができますが、過去に断った件数そのものは疑いようがありません。営業担当への聞き取りや、問い合わせフォームの受信記録をさかのぼる作業で回収できます。

ただし、断った時期が古いほど現在の需要を示す力は弱まります。何年前までさかのぼったのかを明記したうえで、直近と過去で分けて集計してください。

既存事業から類推できる範囲には限りがある

既存事業の数字を新規事業に当てはめる方法もありますが、類推が成立する範囲は限られます。顧客層と購買の意思決定プロセスが同じであれば、受注率や商談期間はある程度まで持ち込めます。一方で、顧客層が変われば単価も受注率も別物になると考えたほうが安全です。

類推を使うときは、何を同じと見なし、何を別と見なしたのかを書き添えてください。前提を明示しておけば、読み手はそこだけを検証すればよくなります。

ここまでの材料がいずれも手元にない場合、つまり既存の取引先も失注の記録も存在しない新しい領域では、強度1と2の材料をこれから作ることになります。次の章では、その状況で何ができるのかを見ていきます。

統計も実績もない市場で、需要の「不在」をどう示すか

統計に該当する市場区分がなく、社内にも引き合いの記録がない。新規事業ではこの状態から始まることが珍しくありません。一般的な解説では独自推計に進む案内が中心ですが、推計は前提の置き方しだいで結果が変わるため、強度としては最も低い材料でした。

このとき取れる方法のひとつが、商材の説明を載せたページを用意し、検索広告を通じて実際の見込み客に見せ、反応を数えることです。推計との違いは、前提を置かずに済む点にあります。

以下は、法人向けレンタル・サプライ業(反復納品型のBtoB)で実施した検証の数値です。広告費は10万円前後、期間は2週間、キーワードは30語を5つの分類に分けて配信し、全体の表示回数は約1,850回でした。

このうち、顧客の困りごとを言い当てる訴求と、小口から対応できることを打ち出す訴求は、表示回数が0回でした。クリックされなかったのではなく、その言葉で検索する人が配信期間中に現れなかったということです。配信した地域と期間、そしてキーワードの一致設定の範囲内での結果ではありますが、その範囲では検索需要が確認できませんでした。

ここで注目したいのは、確定までの速さです。需要があることを示すには、クリックを集めて問い合わせを積み上げる必要があり、件数が少ないうちは判定がつきません。これに対して「検索されていない」という事実は、表示回数という大きな分母の上で確認できるため、少ない予算と短い期間でも確定します。需要の不在は、需要の存在よりも早く分かると考えています。

計画書に書くときは、その訴求軸に市場性が確認できなかったと記述するのではなく、訴求の言葉を変えて再測定したうえで結論を出してください。言葉が市場と合っていないだけの可能性が残るためです。

なお、10万円前後という金額はこの案件で判定に至った実績であって、必要な予算がこの水準だという意味ではありません。市場の検索量によって必要な予算は変わります。

実際に需要を測ると、どこまで分かってどこから分からないか

前章と同じ案件の数値を使います。広告費は10万円前後、期間は2週間、クリックは129件でした。

まず成約から見て、判定がつかなければ順に下りる

BtoBの事業判断では、成約から見るのが原則です。問い合わせが何件取れたかではなく、その先で商談になり受注に至ったかどうかが、事業として成立するかの答えに最も近いためです。

この案件では、問い合わせ15件から商談5件、成約2件に至りました。広告費で割ると、問い合わせ単価は6,500円前後、商談単価は2万円前後、成約単価は5万円前後になります。成約が出たという事実は確定しています。

一方で、成約2件という件数から言えることは限られます。どの顧客層から出たのかを追跡する設計にしていなかったため、層ごとの成約率を比べることができません。ここは設計の不備で、追えるようにしておけば強い材料になった箇所です。

そこで、成約で判定がつかない部分については、問い合わせ件数、さらにクリック率へと順に下りて見ていきます。統計的に扱いやすい指標から先に見るのではなく、事業判断に近い指標から順に下りるという順序を守ってください。

確定する差と、確定しない差がある

顧客層ごとの数値を、95%信頼区間とあわせて示します。区間は、同じ条件でもう一度測ったときに結果が収まる範囲だと考えてください。区間が重なっている2つの層は、どちらが高いかを判定できません。

層クリッククリック率95%信頼区間問い合わせ反応率95%信頼区間
A(新興・小規模の事業者/既存の取引先を持たない層)2517.0%11.8〜23.9%520.0%8.9〜39.1%
B(短期・一時的な利用を前提とする層)1615.5%9.8〜23.8%212.5%3.5〜36.0%
C(大規模/既存業者との取引がある層)86.5%3.3〜12.3%112.5%2.2〜47.1%
汎用(層を限定せず業者を探す検索)755.7%4.6〜7.1%79.3%4.6〜18.0%
E(隣接業種の名称で検索している層)53.2%1.4〜7.2%00%0〜43.4%

クリック率については、AとBの区間が、汎用およびEの区間と重なっていません。この2つの層は他より明確に反応が良いと言えます。Cは中間に位置し、どちらとも区別がつきませんでした。

反応率については、すべての層で区間が重なっています。Aの20.0%は汎用の9.3%の2倍を超えますが、この標本では「Aのほうが高い」と言い切ることはできません。 分母がクリック数であり、一桁から数十件にとどまるためです。クリック率の分母は表示回数で、桁がひとつ大きくなります。同じ検証でも、指標によって得られる精度が違います。

10万円前後を使って確定したのは、層ごとのクリック率の序列までです。反応率の序列と、層ごとの成約率までは届きませんでした。

ゼロには2種類ある

前章で触れた表示回数0は、分母が十分に大きいなかで観測されたゼロですから、確定した結論として扱えます。

これに対して、Eの問い合わせ0件は性質が違います。クリック5件からのゼロで、区間の上限は43.4%です。真の反応率が3割を超えている可能性も残っており、何も判定できていません。11回表示されてクリックが0だった訴求も同様で、区間の上限は25.9%でした。

分母を確認せずにゼロを見ると、判定できていない結果を「需要がない」と読んでしまいます。検証の結論には、GOとNO GOに加えて「判定不能」を正式な選択肢として置いてください。 二択にすると、判定がつかない結果が出たときに、組織のなかでは進めたい側に寄ります。Eについての正しい結論は、需要がないことではなく、判定に必要なクリックが集まらなかったことです。

自社の強みは、市場が検索している言葉とは限らない

同じ案件を、反応があった側から見ていきます。

クリックと問い合わせが集まったのは、顧客層の名称と「業者を探している」という行為を組み合わせた訴求でした。使われている言葉は、商材の一般名称と、探しているという状態を示す語の2つだけです。商材の特徴には一切触れていません。

これに対して、表示やクリックが得られなかった訴求は3つありました。設備と管理体制の先進性を示すもの、小口から対応できることを打ち出すもの、そして商材を管理業務という言い方に置き換えたものです。いずれも検証の前のヒアリングで、自社の強みとして挙がっていた内容でした。

ここから言えるのは、強みの評価が間違っていたということではありません。設備や管理体制は、商材を検討している相手に対しては判断材料になります。ただし、検索する段階では使われていませんでした。 業者を探し始めた人が入力するのは、自分が属する層の名前と商材の一般名称であって、提供側が持つ特徴ではなかったということです。

前章までに挙げた3つ目の突き返される型は、自社の強みを並べた記述でした。強みは競争優位性の説明であって市場性の説明ではなく、市場が同じ評価をしているかどうかは確かめるべき対象だと書いています。この案件では、市場は強みの言葉で自社を探していませんでした。

事業計画の市場性の欄に強みを並べても根拠にならないのは、書き方の問題ではありません。市場がその言葉で自社を探していないためです。強みを書く場所は、需要が確認できた層に対して、なぜ自社が選ばれるのかを説明する箇所になります。出会うための言葉と、出会ったあとに差別化する言葉は、役割が違うと考えています。

自社が強みだと考えている言葉と、顧客が探すときに使う言葉が一致しているかどうかは、測れば分かります。一致していなかった場合に捨てるべきなのは強みではなく、強みを入口に置くという設計のほうです。

自社の数字で判定するチェックシート

ここまでの内容を、そのまま社内資料に転記できる形にまとめます。前章までに挙げた数値は1つの案件のものですから、目安となる基準値としては使えません。代わりに、自社で測った数字を当てはめて判定できる形にしています。

観測された状態から、次の行動を決める

検証の結果は、どの段階で数字が止まったかによって意味が変わります。同じ「反応がない」でも、検索されていないのか、選ばれていないのか、判定できるだけの件数に達していないのかで、取るべき行動は別のものになります。

観測された状態意味次の行動実案件での該当
表示回数がほぼ0確定。その言葉で検索する人がいない訴求の言葉を変えて再測定する。変えても0なら、その訴求軸に市場性はない2つの訴求が該当
表示はあるが、クリックがごく少数判定不能。検索はされているが、選ばれたかどうかを測れていない表示を積んでから再判定する1つの訴求が該当
クリックがあり、問い合わせ0(クリックが一桁)判定不能。標本が足りないクリックを積んでから再判定する。ここで打ち切らない1つの層が該当
クリックが十分にあり、問い合わせ0需要はあるが、提示している内容が合っていない提供内容、価格、フォームの導線を見直す該当なし
問い合わせはあるが、商談化0問い合わせの質が想定と違う訴求と実際の提供内容のずれを点検する該当なし
商談はあるが、成約0市場性ではなく、条件の問題として切り分ける価格と商流を見直す該当なし
成約が出た継続の判断材料が揃った成約が出た範囲に絞って投下する全体として該当(層別は未追跡)

判定不能の行を3つ設けています。検証の結論をGOとNO GOの二択にすると、判定がつかない結果が出たときに、組織のなかでは進めたい側に寄ります。 判定不能を正式な結論として置くことで、追加で測るという選択肢が残ります。

基準値は、検証を始める前に決めて記録する

この表は状態から行動を導くものですが、GOかどうかの判断には、自社が事業として成立する水準を別に決めておく必要があります。決める項目は、問い合わせの件数、獲得単価の上限、商談化率、成約件数の4つです。

決める時期に条件があります。検証を始める前に決めて、記録に残してください。 結果を見てから基準を作ると、どのような数字が出ても説明をつけられてしまい、根拠として機能しなくなります。この記事で扱ってきた検算可能性は、ここにも当てはまります。第三者が確かめられるのは、事前に置いた基準と、実際に出た数字を照らし合わせた過程です。

確認項目基準値(検証前に記入)実績判定
検索需要が存在するか表示回数   回以上
クリックが取れるかクリック率   %以上
問い合わせに至るか反応率   %以上(クリック   件以上を前提)
商談化するか商談化率   %以上
成約が出るか成約   件以上
想定した顧客層に反応があったか事前に立てた層に反応があったか

基準値を決められない場合は、既存事業の実績から置いてください。既存事業がない場合は、事業計画で置いた売上目標から逆算します。逆算して出てきた数字が現実的でないと感じたなら、その感覚自体が計画の見直しにつながる情報です。

誰に頼むか、自分でやるか

強度1と2の材料をこれから作る場合、手段はいくつかあります。外部に頼む方法だけでなく、自社で実施する方法と、追加の投資をせずに手元の材料で提出する方法も含めて比較します。

5つの選択肢を同じ軸で比べる

費用はいずれも一般的なレンジで、実際には条件によって変わります。

選択肢得られる根拠の強度費用の目安期間の目安向いている状況
何もしない(手元の材料で提出する)手元にあるもの次第なしなし引き合いや失注の記録が揃っており、提出先の要件も満たしている
自社で実施する強度1広告費のみ。数万円から設計と運用の習熟を含めて1〜2か月広告運用の経験者が社内にいて、工数を割ける
調査会社に発注する強度3から4数十万円から数百万円程度1〜3か月市場の規模を定義から指定して押さえたい
広告代理店に依頼する強度1運用手数料に広告費が加わる契約期間による検証後にそのまま配信を継続する前提がある
検証専業のサービスを使う強度1数十万円程度に広告費が加わる2週間から1か月続けるかどうかの判断を短期間で出したい

調査会社が出すのは市場の規模と構造ですから、強度3から4の材料になります。前章までに見た実際の反応は含まれません。反対に、広告を使う3つの選択肢で得られるのは強度1の材料であり、市場全体の規模は分かりません。提出先が規模の数字を求めている場合は、どちらか一方では足りないことになります。

広告代理店と検証専業のサービスは、実施する作業が重なる部分があります。違いは目的で、前者は配信を継続して成果を伸ばすことを前提に設計し、後者は続けるかどうかの判断材料を出すところまでを範囲とします。継続する見込みが高いなら前者のほうが移行が滑らかです。

どれを選ぶかは4つの条件で決まる

第一に、統計に該当する市場区分があるかどうかです。区分があり、自社の市場定義とおおむね一致するなら、調査会社に頼まずとも公開データで足ります。

第二に、社内に引き合いや失注の記録があるかどうかです。揃っているなら、何もしないという選択肢が現実的になります。前章のチェックシートで判定できる状態にあるなら、追加の投資は不要です。

第三に、提出先が何を求めているかです。補助金のように公募要領が客観的データを指定している場合、強度1の材料だけでは要件を満たしません。規模の数字を別に用意することになります。

第四に、意思決定までに残された期間です。調査会社への発注は1か月以上を見込む必要があり、稟議の期日が近い場合は間に合いません。広告を使う方法は短期間で結果が出ますが、社内に運用の経験がなければ設計の学習に時間がかかります。

この4つを確認すると、多くの場合は選択肢が1つか2つに絞られます。迷いが残るのは、統計も社内実績もなく、かつ提出先が規模の数字を求めている場合です。 このときは強度3の材料を公開データで組み立てたうえで、自社が取れる分を強度1の材料で裏づける構成になります。

まとめ 統計を探す前に、手元を数える

市場性の根拠として評価されるかどうかは、データの出所の格ではなく、読み手が筋道を検算できるかどうかで決まります。市場の規模を示す材料と、自社がそこからいくら取れるのかを示す材料は別のものですから、両方が揃って初めて根拠として機能します。

この記事では表を2つ用意しました。根拠の強度を5段階で整理した表と、検証で観測された状態から次の行動を導く判定シートです。どちらもそのまま社内資料に転記できます。

最後に、今日できることをひとつ挙げます。過去に断った案件の記録を数えてみてください。 営業担当への聞き取りか、問い合わせフォームの受信記録をさかのぼる作業で回収でき、統計を探しに行くよりも早く終わります。その件数は、あなたが新規事業で取れる需要の下限を示します。

その新規事業、「売れるか」を2週間で確かめられます

カリアドは、新規事業の需要検証に特化したサービスです。

調査レポートや社内の議論では、結局「売れるかどうか」は分かりません。検証用LPを作り、実際に広告を配信し、見込み客が反応するかどうかを数値で確認します。

開発に数百万円を投じる前に、まず市場に聞く。それが最も安く、最も速い意思決定の方法だと考えています。

期間は2週間程度、費用は定額。検証レポートと広告の生データをお渡しするので、そのまま社内報告にお使いいただけます。

まずは無料相談から。検証すべき仮説の整理だけでもお役に立てます。

この記事を書いた人

Webマーケティング歴8年超。Web広告代理店でのコンサルタント職を経て、事業会社にて責任者としてリード獲得体制をゼロから構築。現在はSaaS企業のマーケティングを担当しながら、カリアドで新規事業の需要検証を手がけています。広告運用の実データにもとづく検証設計を専門としています。

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