- BtoBとBtoCで、判定する地点が変わる
- 新規事業に向く広告媒体と、向かない媒体
- 広告費はいくらから始めるか
- 広告は「集客」ではなく「判定」に使う
- 10万円・2週間の検証で実際に出た数字
新規事業で広告を出そうとすると、決めることが一度に押し寄せてきます。どの媒体を選ぶのか、いくらかけるのか、何日回すのか。そして数字が出たあと、それが良いのか悪いのかをどう判断するのか。既存事業のように比較できる過去の実績がないため、同じ結果を見ても、前向きな人には十分に見え、慎重な人には不足に見えます。
先に結論をお伝えします。判断を分けるのは予算額ではなく、配信前に基準を決めてあるかどうかです。そして見る順番は、事業として成立するかを確かめられる地点から始まります。
| よくある問い | この記事の答え |
|---|---|
| どの媒体から始めるか | 検索広告。探している人がいるかどうかが数字で分かる |
| いくら必要か | 10万円台・2週間から。本格運用の予算は判断がついてから決める |
| 何を見て判断するか | 事業の成立を判定できる地点から見る。つかないときだけ下の指標に下りる |
| いつ止めるか | 配信前に決めた5項目に照らす。結論は続ける・やめる・まだ分からないの3つ |
実際に10万円・2週間で回した検証の数値を、成約まで追った結果とあわせて公開します。事例はBtoBですが、設計と判断の順序はBtoCでもそのまま使えます。両者の違いから整理していきます。
BtoBとBtoCで、判定する地点が変わる

新規事業の広告を設計するとき、最初に決めるのは「どこまで見えたら判断してよいか」です。ここがBtoBとBtoCで大きく異なります。
判定に使うべきなのは、事業として成立するかを確かめられる地点です。BtoCであれば購入や申込、BtoBであれば成約がこれにあたります。違いは、その地点が広告の管理画面で見えるかどうかです。
| BtoC | BtoB | |
|---|---|---|
| 判定する地点 | 購入・申込 | 成約 |
| その地点が見える場所 | 広告の管理画面(ほぼ即時) | 営業の記録(数週間〜数か月後) |
| 判断のタイミング | 配信終了時点 | 配信終了後、待つ期間が必要 |
| 同じ予算で出る件数 | 多い。層別に判断がつきやすい | 一桁になりやすく、下の指標に下りる頻度が高い |
| 層の分け方 | 年齢層、利用シーン、課題、地域 | 業種、企業規模、利用形態 |
BtoCは購入までが管理画面で完結するため、配信が終わった時点で判断できます。単価が低く件数も出やすいので、層ごとに割っても数字が残ります。
BtoBは事情が違います。問い合わせが商談になり受注に至ったかは管理画面に出てこないため、営業側の記録と突き合わせ、検討期間の分だけ待つことになります。件数も一桁にとどまりやすく、下の指標に下りる場面が頻繁に出てきます。
期間はどちらも2週間が目安になりますが、理由が違います。BtoBは平日に反応が集中するため、平日を10日分確保する必要があります。BtoCは曜日による差が出やすいため、週末を2回含める必要があります。
以降は、この違いを踏まえたうえで共通の設計を説明していきます。
新規事業に向く広告媒体と、向かない媒体

使える媒体は多くありますが、検証の段階で使えるものは限られます。基準になるのは費用でも運用のしやすさでもなく、反応がなかったときに理由を切り分けられるかどうかです。
検索広告から始めるのがおすすめ
検索広告を最初に置く理由は、需要の有無が数字ではっきり出るためです。
たとえばある言葉で広告を出して表示回数が0だった場合、それはその言葉で探している人が期間中にいなかったことを意味します。入札で競合に負けたわけでも、広告文が悪かったわけでもありません。検索そのものが発生していなかったということです。
この読み方は他の媒体ではできません。SNS広告やディスプレイ広告は、こちらが指定した相手に配信する仕組みです。相手が探していなくても広告は表示されるため、反応がなかったときに、興味がないのか、タイミングが悪かったのか、広告の内容が悪かったのかを切り分けられません。
検索広告は、相手が自分から探しに来たときにだけ表示されます。そのため「反応がない」ことの意味がはっきりします。新規事業で最初に知りたいのは、この市場に需要があるかどうかです。その問いに最短で答えてくれるのが検索広告だと考えています。
検索需要がない場合はSNS広告・ディスプレイ広告
ただし検索広告が使えないケースがあります。商品のカテゴリ名が、まだ世の中に存在していない場合です。
新しい仕組みやサービスを作ったとき、顧客はその名前を知りません。名前を知らなければ検索もしませんので、広告を出しても表示回数が伸びない状態になります。
この場合はSNS広告やディスプレイ広告に切り替えます。業種、職種、企業規模、年齢層といった属性で対象を指定し、こちらから接触していく形です。BtoBであればLinkedInやFacebookに使える属性データが比較的そろっています。BtoCであれば、Instagram広告やYouTube広告が候補になります。
ただし先ほど触れたとおり、結果の解釈は難しくなります。反応がなかった理由を切り分けにくいためです。クリック率だけを見るのではなく、広告のパターンを複数用意して比較できる設計にしておいてください。
展示会・DM・タイアップは判断がついた後に
展示会、DM、記事タイアップ、交通広告といった手段は、検証の段階には向きません。
理由は費用の高さではなく、やり直しに時間がかかる点にあります。展示会は出展枠を押さえた時点で内容がほぼ固定されますし、DMも発送してしまえば終わりです。訴求が外れていたと分かっても、翌日に差し替えることができません。
検証で優先されるのは、外れたと分かった時点ですぐ次を試せることです。これらの手段は、どの層に何を伝えるかが決まった後、規模を広げる段階で使うのが適しています。
媒体ごとの費用目安
| 媒体 | 費用の目安 | 最短の実施期間 | 検証への向き |
|---|---|---|---|
| 検索広告 | 月10万円〜 | 2週間 | 高い |
| SNS広告 | 月10万円〜 | 2〜3週間 | 中程度 |
| ディスプレイ広告 | 月10万円〜 | 2〜3週間 | 中程度 |
| 記事タイアップ | 50万〜300万円 | 1〜2か月 | 低い |
| 展示会 | 50万〜200万円 | 3〜6か月 | 低い |
| DM | 10万〜100万円 | 3週間〜 | 低い |
金額は一般的な相場です。実際の見積もりは商材や規模によって変わります。
広告費はいくらから始めるか

新規事業の広告予算は、判断するための予算と、判断がついた後の予算に分けて考えます。この2つを混同すると、いくらかければいいのかが決まりません。
検証段階は10万円台から
判断のための予算は、10万円台から組めます。売上を作るための予算ではありませんので、金額は「知りたいことを知るのに足りるかどうか」で決まります。
必要なのは、どの層が反応するかを見分けられるだけのデータです。検証したい層が4〜5に分かれる程度であれば、10万円前後で足ります。層を増やすほど1層あたりのデータが薄くなりますので、5を超える場合は予算を増やすか、層を絞るかの判断が必要になります。
期間は2週間を目安にしてください。1週間では曜日による偏りが出ます。
判断がついた後の上限は、1件の成果から逆算する
本格運用の予算は、1件の売上にいくらまで払えるかから逆算します。
| 手順 | 計算 | BtoBの例 | BtoCの例 |
|---|---|---|---|
| ① 顧客1人・1社の生涯売上 | ー | 50万円 | 2万円 |
| ② 粗利率をかける | ①×粗利率 | 15万円(30%) | 8,000円(40%) |
| ③ 広告費に回す割合をかける | ②×割合 | 3万円(20%) | 1,600円(20%) |
③が、成約や購入1件に払える上限です。**その手前の行動を単位に上限を置かないでください。**BtoBであれば問い合わせ、BtoCであれば資料請求や無料登録がこれにあたります。ここで上限を置くと、その先につながらない反応を安く集めた広告が合格になってしまいます。
新規事業では①の数字が分かりません。その場合は、うまくいった場合、標準的な場合、厳しい場合の3通りを置き、いちばん厳しい数字から計算した上限を採用します。この上限を超えたら見送り、下回れば最悪の想定でも成立すると読めます。正確な金額を出す必要はありません。必要なのは、越えてはいけない線がどこにあるかだけです。
なおBtoCで単発購入が中心の商材では、①にリピートを含めるかどうかで金額が数倍変わります。リピート率の実績がない段階では、初回購入のみで計算しておくほうが安全です。
代理店に依頼する場合の費用
広告代理店に運用を依頼する場合、手数料は広告費の10〜20%程度が一般的な相場とされています。
ただし広告費が10万円ですと、手数料は1〜2万円にしかなりません。この金額では代理店側の採算が合わないため、最低契約金額を設定しているところがほとんどです。月30万円、50万円といった下限が設けられているケースをよく見かけます。
そのため、検証だけを短期で依頼する形は成立しにくいのが実情です。代理店に依頼するのであれば、判断がついた後の本格運用からのほうが噛み合うでしょう。
広告は「集客」ではなく「判定」に使う

媒体と予算が決まったところで、設計の考え方に移ります。新規事業の広告は、リードや注文を集めるための手段ではありません。この事業を続けるかどうかを判定するための手段として設計してください。
集客として使うと、判断材料が残らない
広告を獲得の手段として設計すると、評価の対象は件数とCPAになります。既存事業なら過去の数字という比較対象があるため、これで十分です。新規事業には、その比較対象がありません。
10件しか取れなかったという事実に対して、需要がないのか、訴求が合っていないのか、専用ページに問題があるのか。これを切り分ける材料が手元に残らないためです。切り分けられなければ、次に何を変えればよいかも決まりません。
同じことは、うまくいった場合にも起こります。想定より安く獲得できたとしても、なぜ安く済んだのかを説明できなければ、予算を増やしたときに再現しません。つまずくのは成果が出ないときよりも、出た成果を説明できないときです。
ターゲットは、固めてから着手しなくてよい
広告関連の記事の多くは、施策に入る前にターゲット設計とポジショニングを固めるよう案内しています。この順序は、市場も競合も既知であることを前提にしています。既存事業の隣接領域に出す場合であれば成り立ちますが、顧客層そのものが未知の新規事業では、事前に固めきれません。
誰に売るかを決めるには競合との位置関係が必要で、位置関係を決めるには顧客の選定基準の理解が必要になります。しかしその理解は、実際に顧客と接触しなければ得られません。この循環に入ると、設計だけで数か月が過ぎます。
そこで、ターゲットは仮説の粒度で止めておき、広告にぶつけて返ってきた反応で確定させる順序をおすすめします。想定する顧客層を5つ以内に分解し、それぞれに向けた訴求を用意して、どこに反応が集まるかを見ます。
ただしターゲットが数十社程度に限られている商材では、広告よりも直接接触したほうが速く、確実です。検索されるだけの母数がある市場で、かつ顧客層の仮説を絞りきれていない場合に、この順序が効いてきます。
判定装置として設計するとは、何をすることか
判定のために設計するというのは、配信を始める前に「何がどうなったら続け、どうなったら止めるか」を決めておくということです。決めておくべきものは、広告費、期間、成果とみなす行動、判定地点を誰がいつ集計するか、そして撤退ラインという5つになります。
この5つを事前に決めてあるかどうかで、同じ支出の性質が変わります。決めてあれば、反応がなかった訴求に消えた費用も「この訴求では取れない」という答えを買った金額として残ります。決めていなければ、同じ費用は説明のつかない消化になります。
副産物もあります。数字を見てから基準を作ると、判断する人の立場によって基準が動いてしまいますが、事前に合意した基準へ当てはめる形にしておけば、結論を数字だけで出せます。
10万円・2週間の検証で実際に出た数字

対象は法人向けのレンタル・サプライ業です。既存のお客様とは別の層に需要があるかどうかを確かめることが目的でした。クライアントの特定を避けるため社名と商品名は伏せていますが、数値そのものは加工していません。
BtoBの事例ですが、BtoCの場合は「問い合わせ」を資料請求や無料登録、「成約」を購入と読み替えていただければ、そのまま当てはまります。
全体の結果
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手法 | 検索広告+専用ページ |
| 広告費 | 約10万円 |
| 期間 | 2週間 |
| 成果とみなす行動 | フォームからの問い合わせ・資料請求 |
| 検証したキーワード | 30語(完全一致15/フレーズ一致15) |
| 検証した層 | 5つ |
| 表示回数 | 約1,850回 |
| クリック/クリック率 | 129回/6.97% |
| 問い合わせ/CPA | 15件/約6,500円 |
| 商談/成約 | 5件/2件 |
CPAの約6,500円という数字は、この商材と地域における結果であり、他の事業に当てはまる相場ではありません。以降で見ていただきたいのは、この絶対値ではなく判断の順序のほうです。
問い合わせ15件が、成約2件になるまで
広告の管理画面で見えるのは、問い合わせが何件来たかまでです。事業として続けるかどうかは、その15件がその後どうなったかで決まります。配信終了後に営業側で追跡した結果が次のとおりです。
| 段階 | 件数 | 前段階からの率 | 1件あたりの広告費 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせ | 15 | ー | 約6,500円 |
| 商談 | 5 | 33.3% | 約19,700円 |
| 成約 | 2 | 40.0% | 約49,200円 |
事業を続けるという判断の根拠になったのは、問い合わせが15件来たことではありません。そのうち3分の1が商談に進み、さらにその4割が受注に至ったという点です。成約1件あたりの広告費は約49,200円で、前章の逆算で出した上限と比べて判断します。
商談化率33.3%はこの案件では合格でしたが、評価は商材によって変わります。単価が高く検討期間が長ければこの率でも十分ですし、短期で決まる商材なら低いと見るべき水準です。自社の既存事業の商談化率と比べるのが、いちばん確かな物差しになります。
裏を返すと、判定地点のデータがない段階でCPAの良し悪しは判定できません。仮にCPAが3,000円だったとしても、1件も売上につながらなければ、その広告は機能していないことになります。BtoCでも、購入までを計測する設定を配信前に済ませておく必要があるのは同じです。
反応があった層、なかった層
5つの層に分けて配信した結果です。
| 層 | クリック | クリック率 | 問い合わせ | CPA |
|---|---|---|---|---|
| A:新興・小規模事業者(取引先を持たない層) | 25 | 17.01% | 5 | 約3,600円 |
| B:購入ではなくレンタルを探している層 | 16 | 15.53% | 2 | 約7,000円 |
| C:業界の主要顧客(既存の取引先あり) | 8 | 6.50% | 1 | 約7,300円 |
| D:カテゴリ名での検索 | 75 | 5.73% | 7 | 約7,800円 |
| E:隣接業種(新規開拓先と想定していた層) | 5 | 3.18% | 0 | ー |
| 全体 | 129 | 6.97% | 15 | 約6,500円 |
表示回数は全体で約1,850回、そのうちDが約1,300回を占め、Aは約150回にとどまっています。
読み取れることが2つあります。ひとつは、クリック数とクリック率が逆の順序になっている点です。最もクリックを集めたDは、クリック率では下から2番目でした。カテゴリ名で検索する人には、調べているだけの層が混ざっているためだと考えられます。
もうひとつ、AとCの対比がこの検証でいちばんの発見でした。業界の主要顧客であるCのクリック率は6.50%と全体平均を下回っています。すでに取引先がある会社は、検索で業者を探さないということです。クライアントが当初狙っていたのは売上規模の大きいCの層でしたが、反応が集中したのは取引実績のない新興層のほうでした。
数字の読み方|判定地点から見て、判断できなければ順に下りる

最初に見るのは、事業の成立を判定できる地点です。BtoBなら成約、BtoCなら購入。その手前の件数やクリック率ではありません。ここで判断がつくのであれば、そこで終わりにして構いません。判断がつかないときにだけ、下の指標に下りていきます。
| 順位 | 見る指標 | 判断できること | 下りる条件 |
|---|---|---|---|
| 1 | 売上金額・ROAS | 事業として続けるか | 金額がまだ確定しない |
| 1′ | 成約・購入の件数 | 同上(金額が取れない場合の代用) | データが返らない/件数が少なく層別に割れない |
| 2 | 手前の行動の件数 | どの訴求が刺さったか | 層ごとの件数が一桁で優劣がつかない |
| 3 | クリック率 | どの層を狙うか | ー |
1段目でまず件数を見て、金額まで取得できるならROASで判断します。ROASは広告費に対していくらの売上が立ったかを示す指標です。件数だけで見ないほうがよいのは、1件あたりの金額差が大きい商材では実態を読み違えるためです。成約が2件でも、1件が大口なら十分に回収できているケースがあります。
2段目の「手前の行動」は、BtoBなら問い合わせ、BtoCなら資料請求やカート投入がこれにあたります。
実例では、成約2件で事業を続けることが決まりました。ただし2件では、5つの層のどこに予算を寄せるべきかまでは割れません。次に問い合わせ件数を層別に見ましたが、Aの5件・Dの7件という一桁の差では順位を信じられません。そこでクリック率まで下りて、初めてA層が他と分かれました。
件数が一桁のとき、順位を信じてはいけない理由
数字には、もとになる数によってブレ幅が生まれます。5クリックで1件と50クリックで10件では、同じ20%でも確からしさがまったく違います。
| 層 | 問い合わせ率 | 実際にありうる範囲 |
|---|---|---|
| A | 20.0%(5件) | 9〜39% |
| D | 9.33%(7件) | 5〜18% |
範囲が重なっていますので、AのほうがDより高いとは言い切れません。一方、クリック率で同じことをすると結果が変わります。
| 層 | クリック率 | 実際にありうる範囲 |
|---|---|---|
| A | 17.01% | 12〜24% |
| D | 5.73% | 5〜7% |
| E | 3.18% | 1〜7% |
こちらは重なっていませんので、この規模でも順位を判断できます。差が出た理由は、もとになる数の違いです。問い合わせ率のもとは129クリック、クリック率のもとは約1,850回の表示で、14倍の開きがあります。
この順序は一方通行です。上位で差がつかないときに下へ降りるのは構いませんが、下位の指標が良かったからといって上位の判断を覆すことはできません。クリック率でA層が優れていたことは、A層が売上につながりやすいことを意味しません。
「自社の強み」は3つとも空振りだった

この検証でいちばん意思決定を変えたのは、上の表に出ていない結果でした。
クライアントは開始前に、自社の強みを3つ挙げていました。設備投資による品質管理、洗浄回数を追跡する管理体制、そしてロットの柔軟性です。いずれも競合が持っていない機能で、この3点を軸に広告の見出しを作りました。結果は次のとおりです。
| 訴求 | 結果 |
|---|---|
| 品質管理 | 表示回数0 |
| ロットの柔軟性 | 表示回数0 |
| 管理体制 | 11回表示、クリック0 |
表示されなければ費用は発生しませんので、この3つの検証は実質0円で終わったことになります。表示回数0が意味するのは、入札で負けたということではありません。その言葉で検索する人が、期間中に一人もいなかったということです。
実際に反応があったのは、今すぐ業者を探している人が使う言葉でした。顧客は機能で探しているのではなく、カテゴリで探して、見つけてから機能を比べているということです。BtoCでも同じで、素材や製法のこだわりで検索する人はほとんどおらず、用途や悩みの言葉で探されます。
ここから出た結論は、強みを捨てるということではありません。置き場所を変えるということです。広告の見出しからは外して、ページ内の比較表に移しました。これが検証の直接の成果になっています。
反応がない3つのパターン
反応がなかった箇所は、意味が3つに分かれます。ここを混同すると、判断を誤ります。
| 状態 | 意味 | 次にやること |
|---|---|---|
| 表示が0 | その言葉で探している人がいない | 訴求を諦める。ページ内の説明に回す |
| 表示はあるがクリック0 | 探している人はいる。言葉が響いていない | 広告文を書き換えて再測定 |
| クリックはあるが成果0 | クリックが少なければまだ分からない。多ければページか商品の問題 | 少ない場合は追加で出す。多い場合はページを見直す |
3行目の分かれ目には注意が必要です。実例のE層はクリック5件で問い合わせ0件でしたが、これを「隣接業種に需要がない」と読むのは危険です。仮に本当の反応率が10%あったとしても、5クリックで0件になることは半分以上の確率で起こります。
十分なクリック数かどうかの目安には、見込む反応率の逆数の3倍を使っています。反応率10%を見込むなら30クリック、5%なら60クリックが下限という計算です。BtoCは反応率が1〜3%程度になることが多いため、下限は100〜300クリックとBtoBより大きくなります。統計的に厳密な基準ではなく、実務上の目安としてお考えください。
撤退の根拠にできるのは、表示が0だった1つ目のパターンだけです。分からなかった層については「需要がない」ではなく「測っていない」と記録してください。この違いを曖昧にしたまま議事録に残すと、半年後に同じ議論をやり直すことになります。
自社の訴求が市場の言葉とずれていないかを確かめる方法は、広告に限りません。ただし、数十万円をかけずに2週間で答えが出る手段としては、検索広告が現実的な選択肢になります。設計の考え方や自社での進め方を整理したい場合は、無料相談で状況を伺ったうえで進め方をお伝えしています。
配信前に決めておく5項目

結果を見てから基準を作ろうとすると、その基準は結果に引きずられます。問い合わせ15件という数字は、前向きな人には十分に見え、慎重な人には不足に見えます。どちらの解釈も数字からは等しく導けてしまうため、基準は先に決めておく必要があります。
| 項目 | 実例 |
|---|---|
| ① 広告費 | 約10万円 |
| ② 期間 | 2週間 |
| ③ 成果とみなす行動 | フォームからの問い合わせ・資料請求 |
| ④ 判定地点を誰が・いつ集計するか。金額も取るか | 配信終了後、営業側で追跡(件数のみ) |
| ⑤ 撤退ライン(成約・購入1件あたりの上限、またはROAS) | 粗利から逆算した範囲に収まった |
④が抜けると、判断が1段階下がります。判定地点を追う仕組みがないまま配信すると、手元に残るのは手前の件数だけです。実例で言えば「15件、CPA6,500円」という報告で終わり、この数字からは事業として続けるべきかどうかが分かりません。
BtoBでは、④は営業の記録との突き合わせを意味します。配信後に「あの問い合わせはどうなりましたか」と聞いて回っても、記録が残っていないことがほとんどです。BtoCでは購入の計測設定がこれにあたり、タグが正しく動いているかの確認が必要になります。どちらも配信前に済ませてください。
結論は3つ用意しておきます。続ける、やめる、まだ分からない、の3つです。2択にすると、判断がつかない結果が出たときにどちらかへ無理に寄せることになり、その寄せ方は数字ではなく社内の力関係で決まってしまいます。実例では、5つの層のうち1つが「まだ分からない」で終わりました。
検証後に当てはめる判定表
期間が終わったら、事前に決めた基準に照らして機械的に判定します。実例では次のようになりました。
| 判定項目 | 事前に決めた基準 | 実績 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 事業を続けるか | 成約1件あたりが上限の内側か | 成約2件・約49,200円 | 続ける |
| 検索需要が存在するか | 表示回数が一定以上あるか | 約1,850回 | 続ける |
| どの層を狙うか | 層ごとの順位がつくか | クリック率でA層が分離 | A層に寄せる |
| 訴求の妥当性 | 掲げた強みに反応があるか | 3つとも表示0またはクリック0 | 訴求を入れ替える |
| 隣接業種の可能性 | 下限クリック数に達したか | 5クリックで下限未達 | まだ分からない |
判定を人が解釈していない点が要です。基準は配信初日に合意したもので、数字を見てから作っていません。この順序を守ることが、判定を社内で通すための条件になります。
成果が出なかった3割は、無駄ではない
約10万円のうち、問い合わせを1件も生まずに消えた分が約28%ありました。カテゴリ名だけのキーワードが約1.3万円を使って0件だった分などが含まれます。この分はクリック数が下限を超えていましたので、調べているだけの層だったと判定しています。
| 事前に基準を決めていた場合 | 決めていなかった場合 |
|---|---|
| 「この語では取れない」と確定した支出 | 説明のつかない消化 |
| 次回の入稿から外す根拠になる | 何を外すかの根拠が残らない |
| 残り72%の効率を説明できる | 全体の平均値しか語れない |
金額は同じで、違うのは事前に基準があったかどうかだけです。はじめから3割程度は反応が出ない前提で予算を組んでおくと、報告の場で慌てずに済みます。
なお、外した予算を反応の良かった層に回せば同じ比率で件数が伸びる、とは考えないでください。A層は表示回数が約150回しかなく、予算を増やしても表示できる回数には上限があります。再配分の効果は、実際に回してみるまで分かりません。
この方法で分かること、分からないこと

ここまで示した数字で言えることには、はっきりした範囲があります。読み違えると社内で誤った合意を取り付けることになりますので、線を引いておきます。
| 内容 | |
|---|---|
| 分かること | 事業を続けるかどうか(判定地点まで追った場合)/どの層に検索需要が偏っているか/どの訴求に反応がなかったか |
| 分からないこと | 市場規模/顧客生涯価値の実績値/成果がどの層から出たか/検索していない層の需要 |
成約2件まで追えたことで、事業として続けるかどうかの判断は付きました。一方、成約がどの層から出たかは分かっていません。フォームに業種や企業規模の欄を入れておけば追跡できましたが、項目を増やすと問い合わせ率が下がります。どこまで取るかは判断が必要な部分です。
制約も3つあります。ひとつは、これが1業種における1回の検証であることです。同じ数字が他の商材で再現するとは限りません。ふたつめは、比較対象を置いていないことです。反応がなかった訴求について、訴求が弱かったのか専用ページに問題があったのかは切り分けられていません。3つめは、期間を延ばしたときの動きを測っていないことです。2週間は反応の有無を見るには足りましたが、CPAが安定する期間としては短いと考えています。
自社でやるか、外に頼むか
検証の手段は5つあります。どれが適しているかは状況によって変わります。
| 手段 | 費用 | 期間 | 分かること | 弱み |
|---|---|---|---|---|
| 自社で運用 | 広告費のみ(10万円〜) | 2〜3週間 | 実際の行動 | 担当者の工数が2〜3週間分必要 |
| 広告代理店 | 広告費+手数料10〜20% | 1か月〜 | 実際の行動 | 少額・短期は受けにくい |
| 調査会社 | 数十万〜数百万円 | 1〜2か月 | 意向、市場規模 | 意向と行動はずれる |
| 顧客インタビュー | 数万〜数十万円 | 2週間〜1か月 | 買わない理由 | 応じる人に偏りが出る |
| 見送る | 0円 | ー | なし | 時間を失う |
自社で運用するのがいちばん安く、ノウハウも社内に残ります。難しいのは管理画面の操作ではなく、基準を先に決めることと、出てきた数字のどこまでを信じるかの見極めです。この2点は本記事の表が使えますので、体制が組めるなら自社が最も合理的です。
広告代理店は実行力が最大の強みです。ただし成果はCPAと件数で測られるため、「この事業はやめたほうがいい」という提案は評価軸の外に出ます。判断がついた後の本格運用から依頼すると噛み合うでしょう。
調査会社は母集団の設計ができる点が強みで、検索していない層にも届きます。ただし分かるのは意向であって行動ではありません。実例で言えば、品質管理体制があれば検討したいという回答は一定数得られたはずですが、その言葉で実際に検索した人は0人でした。
顧客インタビューは、なぜ買わないのかという理由まで踏み込めますし、検索需要がない商品でも実施できます。ただし実例で反応したA層は今まさに業者を探している最中ですので、インタビューには応じてくれないでしょう。広告で層の順位を測り、上位の層に深掘りする併用が現実的です。
見送るのもひとつの選択肢です。既存事業が逼迫している、決裁者がすでに結論を持っている、商品の完成度が足りていない。こうした状態で検証しても、結果が意思決定に届きません。ただし見送るなら、いつまで見送るのかだけは決めておいてください。
どの手段を選んでも、判定地点の追跡は自社に残ります。広告の運用は外部に出せても、その先が売上になったかを記録できるのは自社だけです。依頼する範囲を決める際は、ここを誰が持つのかを最初に確認しておきましょう。
最初の2週間の進め方

実際に取り組む場合の日程を、日単位で整理します。
Day1〜3|決める
検証する層を5つ以内に分けます。5を超えると1層あたりのデータが薄くなるためです。次に前章の5項目を埋めます。決裁が必要な場合は、この段階で稟議を出しましょう。予算、期間、撤退ライン、そしてこの検証で分からないことの4点があれば足ります。
Day4〜5|作る
専用ページを1枚用意します。凝った作りにする必要はありません。層ごとの訴求の差は、ページではなく広告文で出していきます。
フォームの項目をどこまで残すかも、ここで決めます。業種や企業規模、年齢層を残しておくと、どの層が反応したかを後から追えます。ただし項目が増えると反応率は下がりますので、層の判別と件数の確保のどちらを優先するかで決めてください。
キーワードは30語前後を目安に構造化します。マッチタイプは完全一致とフレーズ一致を半々にして、部分一致は使いません。部分一致は意図の異なる検索まで拾ってしまい、どの言葉に反応があったのかが分からなくなるためです。配信前に、自分でフォームを送信して計測が動いているかを確認しておきましょう。
Day6〜19|配信して、設定は変えない
配信を始めたら、期間中は設定を変更しません。ここが通常の運用といちばん違う点です。
成果の悪いキーワードを3日目に止めればCPAは改善しますが、止めた瞬間にそのキーワードは「反応がない」から「試していない」に変わってしまいます。検証結果に穴が空きますので、原則として触らないでください。
例外は2つだけです。計測が動いていないと分かったときと、地域や言語の指定ミスが見つかったときで、この2つは即座に直します。
期間中に見るのは、表示回数が予定どおり伸びているかどうかだけです。半分以下で推移しているなら判定に必要なデータが集まりませんので、予算配分か入札を調整するか、期間の延長を検討してください。
Day20|いったん整理する
配信を止めて数字を整理しますが、この時点ではまだ結論を出しません。判定地点のデータが返ってきていないためです。
ここで確定するのは2つです。表示が0だった訴求と、層ごとのクリック率の順位。この2つは、判定地点を待たずに読めます。層の順位はクリック率で確認し、件数が一桁の層については件数の順位を結論に使わないでください。
BtoCで購入までを管理画面で追えている場合は、この時点で結論まで出せます。
Day20以降|判定地点を待って判断する
BtoBの場合は、問い合わせを追跡して商談化と受注を集計します。集計日は、商材の検討期間に合わせてあらかじめ決めておきましょう。配信終了の翌週に集計しても、検討期間の長い商材では成約が出てきません。
出す結論は、続ける・やめる・まだ分からないの3つのいずれかです。分からなかった層については、そのように記録します。追加で出すのであれば、下限クリック数に届くまでにいくら必要かを同時に計算しておくと判断しやすくなります。
報告には生データを添付してください。全キーワードの実績、広告文とページの画面、管理画面のレポート、そして反応1件ごとの追跡結果です。要約だけを出すと、数字の出どころを聞かれた時点で議論が止まります。
まとめ
新規事業の広告は、リードや注文を集める手段としてではなく、事業を続けるかどうかを判断する手段として設計したほうが、限られた予算でも答えが早く出ます。判断の精度を決めるのは予算額ではなく、配信前に基準を決めてあるかどうかです。
媒体は検索広告から始めます。反応がなかったときに、需要がないのか言葉が響いていないのかを切り分けられるためです。予算は10万円台、期間は2週間から始められます。
見る順番は、事業の成立を判定できる地点から始まります。BtoBなら成約、BtoCなら購入です。金額まで取得できるならROASで、取得できないなら件数で判断します。それで層の優劣がつかない場合に手前の行動の件数、さらにつかない場合にクリック率へ下りていきます。上の段階で判断がつけば、そこで止めて構いません。
その新規事業、「売れるか」を2週間で確かめられます
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調査レポートや社内の議論では、結局「売れるかどうか」は分かりません。検証用LPを作り、実際に広告を配信し、見込み客が反応するかどうかを数値で確認します。
開発に数百万円を投じる前に、まず市場に聞く。それが最も安く、最も速い意思決定の方法だと考えています。
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